【遊技産業の視点 Weekly View】「長寿社会とパチンコ」を考える


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 □ワールド・ワイズ・ジャパン代表LOGOSプロジェクト主幹・濱口理佳

 パチンコという大衆娯楽について「より多くの人々が楽しめる環境の推進」がかねて叫ばれてきた。さらにカジノを含む日本版IRの実現に向けた政府の動きを背景に、遊技への依存対策強化の一環として2月1日には改正規則が施行。今後の市場構築においても、やはり冒頭の言葉が強く唱えられている。

 さて、より多くの人が参加する環境を構築するために、業界では「新規顧客の拡大」がキーワードの一つに掲げられ、若年層ファンの拡大に向けた取り組みや、パチンコ・パチスロをしない人々も遊技に関心を持てるイベントの開催などが展開されつつある。だがファンの育成が一朝一夕でできるはずもなく、さらに言えば遊びやすい遊技機を登場させたところで、これまで関心を抱かなかった層がいきなり遊技に参加し始めるわけもない。誤解を恐れずに言えば、「射幸性を抑えたら依存対策になる」というエビデンスのない行政の主張同様、「遊びやすい遊技機を登場させたらファンが増える」という主張は、どうしてもむなしい理想のように思えてしまう。畢竟(ひっきょう)、時代・ニーズに呼応した価値観の変化と超成熟市場、さらには過酷な情報環境を背景に新規顧客の獲得が困難さを深めるなか、そのハードルは想像以上に高いものだと認識すべきだろう。

 一方、いまの遊技業界のメイン客層を考えたとき、中高年の支持の高さが目立つ。「来店可能な年齢」や「将来の市場形成」を踏まえて、つい若年層や新規客の参加を積極的に促したくなる心情が働くのは分かるが、長寿社会のなか、70代でも80代でも元気な人は多く、まだ現役で働いている人も珍しくない。そのような実情で、彼らと「パチンコの未来の価値」を創造する取り組みは、“これからの高齢者”の遊技参加を促す環境構築に向け、有効な試みだと思われる。またパチンコの原点を知る彼らとともに「遊びやすい遊技機や遊技環境」を考えることで、若年層を含む新規顧客の獲得につながるヒントが得られるかもしれない。何よりも“遊び”を通じた高齢化社会へのアプローチが、あらゆる世代の人々が「人生(長寿)を楽しむ」ことについて考えるきっかけとなることに期待したい。

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【プロフィル】濱口理佳

 はまぐち・りか 関西大学大学院文学研究科哲学専修博士課程前期課程修了。学生時代に朝日新聞でコラムニストデビュー。「インテリジェンスの提供」をコアにワールド・ワイズ・ジャパンを設立。2011年、有志と“LOGOSプロジェクト”を立ち上げた。