【スポーツbiz】「ガバナンスコード」スポーツ界変えるか

日大アメフット部悪質反則問題は大きな社会現象となった。会見する同部の内田正人前監督(右)と井上奨前コーチ=5月、東京都千代田区
日大アメフット部悪質反則問題は大きな社会現象となった。会見する同部の内田正人前監督(右)と井上奨前コーチ=5月、東京都千代田区【拡大】

 師走の声を聞くと、重大ニュースやら回顧録やら今年の振り返りが始まる。スポーツ界の2018年といえば、やはり「不祥事」に集約されよう。

 もう記憶も薄れているが、カヌー選手が後輩選手の飲料に禁止薬物を混入させた事件が始まりだった。女子レスリングや体操のパワーハラスメント、日本大学アメリカンフットボール部選手による悪質タックル、日本ボクシング協会をめぐる助成金の不正使用など、数え上げれば十指で足りない。

 ◆求められる健全性

 なぜ、今年これほど不祥事が続出したのか。端的に言えば、これまで隠れていたものが、突破口をきっかけに一気に噴出したといってもいい。女子レスリングのパワハラ対象者がオリンピック4連覇の選手とその指導者であったり、日大アメフット部の当該選手が行った記者会見が大きく報道されたり、世間の耳目を集めた。選手に同情的な流れが告発につながり、組織の対応の拙さが拍車をかけたことは歴然としている。

 これを機にスポーツ界は変わってほしい。スポーツ組織の健全性を担保すべきだといった声も何度聞いたことか。しかし、相変わらずスポーツ団体の反応は鈍く、再発防止への組織だった対応も遅れた。

 ここにきて、超党派のスポーツ議員連盟のプロジェクトチーム(PT)による提言がまとまった。ようやく再発防止策の筋道がみえてきた感がある。

 概要を言えば、スポーツ団体が守るべき行動規範「スポーツ団体ガバナンスコード」を設けて、各団体が年に1回運営状況を公表。コードを基に健全性を審査し、状況に応じて改善を要求できる仕組みをつくるというものだ。

 スポーツ庁では来年、産業界で定着してきた「コーポレート・ガバナンスコード(企業統治指針)」を参考に、スポーツ界に応じた「ガバナンスコード」をつくるという。産業界のコードは15年、金融庁と東京証券取引所とが中心となり、企業の利害関係者(ステークホルダー)が企業の統制や監視を行ううえで必要となるルールを取りまとめたものである。5つの基本原則に、30の原則、38の補充原則で構成される。

 コードがスポーツ界になじむかどうか、分からないが、組織統治の上では避けては通れない。今、求められているのは組織の健全性、透明性である。

 また、20年東京オリンピック・パラリンピック終了後の財源確保を考えれば、「ガバナンスコード」に基づく審査がスポンサー獲得の条件となる可能性も否定できない。むしろ、積極的な取り組みが求められても不思議ではない。

 既にスポーツ先進国、英国では16年、国家スポーツ戦略の一環として「スポーツガバナンスの国家憲章」や「スポーツガバナンス・コード」を策定。透明性、財務上の高潔性、リーダーシップと意思決定など10の枠組みの下に、構造、人材、コミュニケーション、基準と実践、方針とプロセスといった5つの原則を設けた。これによって組織の大小を問わず、スポーツ団体の自立と持続を可能にする能力の強化を狙う。

 日本でもこうしたコード設定を、国や統括組織から背負わされたものと捉えるのではなく、社会的な責任の大きさも含めて未来志向で考えていくべきではないのか。

 ◆新たに円卓会議設置

 国と、国の介入を嫌うスポーツ界との“綱引き”が続いていた審査機関は、新たに国と統括組織による「スポーツ政策推進に関する円卓会議」(仮称)を設けることで落ち着きそうだ。提言では円卓会議には日本オリンピック委員会(JOC)、日本スポーツ協会(JSPO)、日本障がい者スポーツ協会(JPSA)に加え、スポーツ庁と日本スポーツ振興センター(JSC)が参加するとされる。

 この円卓会議は、運営状況に応じて改善を要求できる権限を持つ。また、第三者による調査が必要な場合、弁護士らが協力する「ガバナンス調査支援パネル」(仮称)をJSCに設けるとしている。第三者委員会設置による団体の財政負担は極めて大きい。軽減が目的でもある。

 ただ、今のところこうした枠組みからプロ野球や大相撲、高野連などは外れている。社会的な影響も大きいそれら組織をどう呼び込んでいくのか、さらに検討が必要である。(産経新聞特別記者・佐野慎輔)