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スタートアップビジネスで最も重要な「当然の事」 実例で振り返る (1/4ページ)

 多くの人にほどほどに好かれるものより、最初は少数でも深く愛される製品のほうが、その後大きく成長する可能性が高い。代表例は、大学生限定のサービスとして誕生したフェイスブックだ。東京大学でスタートアップ支援に従事する馬田隆明氏が、その理由を解説する--。※本稿は、馬田隆明『逆説のスタートアップ思考』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

 「人の欲しがるものを作る」を忘れがち

 スタートアップにとってもっとも重要なことは、「人の欲しがるものを作る(Make Something People Want)」ことです。このMake Something People Wantという言葉は、スタートアップを支援する「アクセラレーター」の中でもトップの実績を誇るY Combinatorの標語になっています。

 人の欲しがるものを作る、という言葉は当然のことのように感じたかもしれません。しかしそれを標語にしないといけないぐらい、スタートアップを始める人たちは「誰かが欲しがるものを作る」ということを忘れがちです。人はつい「自分の作りたいもの」や「誰かがきっと欲しがると決めつけているもの」を作ってしまい、時間を無為に過ごしてしまったあと、資金難に陥ってしまいます。

 スタートアップ関係者から最も尊敬されている人物の一人で、ハッカーであるポール・グレアムによれば、スタートアップが急速に成長するためには以下の2つの条件を満たす必要があるそうです。

 1 大勢の人が欲しがるものを作る

 2 それをすべての人に届ける

 ニーズをつかめずに失敗するパターンが多い

 レストランや美容院といった店舗型ビジネスでは2つめの条件を満たすことが難しいため、急成長することがなかなかできません。そのためスタートアップにはあまり向いていないビジネスと言えるでしょう。

 一方、ソフトウェアビジネスの限界費用はゼロに近く、多くの人に届けることが可能なため、2つめの条件を満たすのは得意です。しかし「大勢の人が欲しがるものを作る」については、満たすことが非常に難しいままです。

 とある100以上のスタートアップの失敗を分析した調査では、失敗の理由として最も多かったものは「市場にニーズがなかった」でした。

 また、スタンフォード大学の調査によれば、そうしたニーズが確認できていない状態でスケールしようとする「成熟前の規模拡大(pre‐mature scaling)」と呼ばれる行動が、スタートアップを潰すという結論を導き出していました。このように、多くのスタートアップはニーズをつかめずに失敗します。

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