高論卓説

スタートアップの過大評価 ウーバーやウィーに企業としての存在意義あるのか (2/2ページ)

 赤字企業が市場を独占するために、巨額の資金調達をすることは、一部の起業家や投資家を利するかもしれないが、資本市場や労働市場をゆがめ、競争原理をもゆがめることになる。赤字のスタートアップが株式を上場し、黒字転換の見通しを示さないまま、赤字を続けることを許容することは、資本主義の自殺行為である。投資家も欲に目がくらみ、資本主義の大原則を破壊している。

 金余りが長く続き、投資家の楽観的態度、というよりは強欲度が拡大したままで、これが企業価値評価を過大にしている側面がある。金融市場は常に均衡点を求めているので、強欲に基づいたスタートアップの過大評価は今後日本でもアメリカでも修正されることになろう。大手投資銀行もスタートアップのIPO手数料が調達額の7%と収益性の高い業務であるので、IPOによる株式投資を楽観論に基づき投資家に対しセールスしている背景がある。

 投資家は、個人も機関投資家も強欲のあまり、IT、AI(人工知能)、EV(電気自動車)、フィンテックやディスラプト(破壊)というレッテルに踊らされて、目が曇り、対象企業の中身と市場の成長性と黒字転換時期をよく検討して判断するという投資の基本動作を忘れてしまったのではないか。

 黒字転換がいつまでたっても実現できないということは、その企業の経済社会における存在意義がないということを、投資家は再度資本主義の大原則として認識する必要がある。

【プロフィル】杉山仁

 すぎやま・ひとし JPリサーチ&コンサルティング顧問。1972年一橋大卒、旧三菱銀行入行。米英勤務11年。海外M&Aと買収後経営に精通する。著書『日本一わかりやすい海外M&A入門』他、M&Aと買収後経営に関する論文執筆と講演多数。昨年3月に発表された経済産業省による『我が国企業の海外M&A研究会報告書』作成にも参加している。東京都出身。

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