テクノロジー

IT起業家 カフェ経営に挑戦 店員の試行錯誤に資金惜しまず

 米IT業界で注目される日本人の起業家が今年1月、畑違いのカフェの経営に乗り出した。10席超と小さいが、出店したのは激戦区の東京・渋谷だ。好奇心旺盛な人々が集まり、新たな技術や事業の話に花が咲く-。自身が夢をつかんだシリコンバレーの精神が息づくカフェを目指している。

 青山学院大近くの路地裏の小さなビル。「メンローパーク・コーヒー」を訪れると、鮮やかな青や赤、黄に配色された個性的な壁が目に飛び込んできた。オーナーの加藤崇氏(41)は「楽観的で寛大なシリコンバレーの雰囲気を再現した」と声を弾ませる。

 加藤氏の本業は米ベンチャー、フラクタの最高経営責任者(CEO)。人工知能(AI)で水道管の更新を最適化する事業を展開している。

 カフェを思い立ったのは、2015年にシリコンバレーに渡り、その存在意義の大きさを知ったからだ。起業家や投資家らが連日、コーヒーを片手に熱い議論を繰り広げ、まさにアメリカンドリームの入り口だった。

 ベンチャー支援をめぐる動きに一石を投じる狙いもある。大企業や行政主導で相次ぐ「イノベーションハブ」などの拠点は「寄らば大樹の陰というか何か違う」。かつて東大出身の技術者と設立した二足歩行ロボットのベンチャーが資金難に陥った際、事業の価値を認め買収を即決したのは米グーグルだった。国内には積極的に支援してくれるところはなかった。

 新たに始めたカフェは、ITに負けず劣らず競争が激しい。近年はコーヒー豆の産地や焙煎にこだわる「サードウエーブ(第3の波)」といわれる店が増え、次のブームの模索も進む。「早く、多く失敗しよう」。加藤氏は資金を惜しまず投じ、店のメンバーに試行錯誤を促す。「フェイルファスト」と呼ばれるベンチャー成功のこつだ。

 一押し商品は、たっぷりのミルクとミントの葉が印象的なアイスコーヒー。清涼感や店頭広告を毎週のように改善し、ヒットにつなげた。近隣のベンチャー経営者や学生が口コミで訪れ、収支はプラスが見えてきた。

 メンローパークは、米アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏がバイブルと語った雑誌「全地球カタログ」が創刊された地だ。

 店の壁には、ジョブズ氏が講演で訴えた「ステイ・ハングリー、ステイ・フーリッシュ」の名言が書かれた最終号の裏表紙が飾られている。貪欲で既存の枠にとらわれない加藤氏の挑戦が続く。

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