テクノロジー

「仮想発電所」めぐる覇権争い過熱 コンビニ・通信も参戦

 工場や家庭にある太陽光パネルや蓄電池などの小規模電源をインターネットにつないで一括制御し、ひとつの発電所のように機能させる「仮想発電所」(VPP)の取り組みが広がっている。再生可能エネルギーの効率運用を見据え、政府も各地で進む実証実験を後押しする。関西電力など大手電力のほか、コンビニ、通信など異業種からの参入も相次ぎ、次世代プラットフォーム争いが過熱している。(岡本祐大)

 カギ握るアグリゲーター

 VPPは、家庭用や小規模な工場などの太陽光パネルや蓄電池を備える電気自動車(EV)などを、IoT(モノのインターネット)技術で一括で管理する仕組み。小規模な電源を集約して需給調整する事業者は「アグリゲーター」と呼ばれる。天候などに左右される太陽光発電を安定的な電源として使用できるとして近年注目を集めている。

 関西電力は2月、大阪市内のスーパーで、屋上に設置した太陽光パネルと蓄電池を組み合わせた実証実験を始めることを明らかにした。太陽光パネルが発電した電力を蓄電池に充電するか、蓄電池から放電して自家消費するかを、関電のVPPシステム「K-VIPs」が瞬時に判断。店舗の効率的な電力消費につながるかを検証する。

 従来は使用量の推移をメーター計測を通じて30分ごとにしか把握できなかった。しかしK-VIPsは1分ごとにデータを収集でき、蓄電か放電の判断を遠隔で制御する。余剰電力を蓄電池にためておけば、夜間や雨天時に電力を使うことで電気料金の削減効果も出てくる。

 実証実験は当面1店舗のみで進めるが、今後は複数店舗への拡大を検討する。将来的には日中の電力使用ピーク時に蓄電池から放電させれば、電力使用の集中を避けることとなり、仮想的に「発電」している状況を生み出すことにつながる。担当者は「エネルギーマネジメントの技術的なノウハウ獲得につなげたい」と意気込む。

 全店導入目指すローソン

 関電以外にも電力各社はVPPの実証事業を加速させている。東京電力ホールディングス(HD)は昨年6月、NECや積水化学工業など計30社の合同で実証実験を始めた。太陽光パネルに加え、工場やビルの自家発電設備などを組み合わせたもので、東電は「幅広い電源の知見を集め、VPPプラットフォームを構築する」考えだ。

 このほか、中部電力が自動販売機やEVなど複数の電源を使った実験を同時並行させるなど、電力各社は他の企業を巻き込んでアグリゲーターとしての地位確立を目指している。

 電力業界以外でも、ローソンが店舗の空調や照明などを遠隔制御する実証を進めており、「将来的には全国の店舗で導入したい」(広報)という。京セラやソフトバンクグループも取り組みを進める。

 災害時の活用も視野に

 これらのVPP実証実験をめぐっては、経済産業省が平成28年度から補助金制度を設けて支援する。背景にあるのは再生エネルギーの利用拡大だ。現状では16%程度にとどまっている太陽光や風力など再生エネ電源の比率を令和12年までに22~24%に増やす計画があるからだ。

 ただ、再生エネ電源は効率的な運用に課題が残る。平成30年9月の北海道の地震で大規模停電が起きた際は、経産省が自家発電設備所有者に個別連絡して供給力の積み増しを要請しなければならなかった。

 このため、経産省はアグリゲーターを免許制にするよう法改正を進める方針。アグリゲーターを通じて需給状況を把握することで、災害時に対応する考えだ。

 相次ぐ自然災害で大規模電源への過度な依存が見直され、二酸化炭素を多く排出するとして石炭火力発電にも逆風が吹く。世論の後押しを背景に、再生エネの有効活用につながるVPPプラットフォームの主導権争いはますます激しくなりそうだ。

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