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終電繰り上げ、前倒し要請に鉄道各社戸惑い 専門家は効果疑問視

 首都圏の知事や国土交通省が新型コロナウイルス対策として、春のダイヤ改正で鉄道各社が予定していた終電時刻繰り上げの前倒し検討を要請したことに、事業者は頭を悩ませている。ダイヤ改正自体の前倒しは困難で、そもそも繰り上げは感染拡大防止を目的としたものではないが、「知事や国交相の要請はむげにできない」と関係者。専門家も効果を疑問視し「政治的なメッセージだ」と指摘している。

 前倒し要請は小池百合子東京都知事が3日に表明し、1都3県が7日に「人の流れを抑制する」として正式に依頼した。赤羽一嘉国交相も「あらゆる手を尽くす」と強調。国交省が8日、同様の要請をした。

 ハードルは高い。JR各社は毎年春、一斉にダイヤ改正しており今年は3月13日の予定だ。JR東日本によると、東日本大震災で改正実施を部分的に遅らせたことはあるが、前倒しは例がない。

 JR東の関係者は「夏ごろから翌年のダイヤ改正の準備が始まる。それだけ精緻に作っている」と説明。各車両を工場で検査する時期や乗務員の体制、線路の保守作業など「関連会社や下請けにも影響する。改正日変更は難しい」と訴える。複数の大手私鉄も「改正自体の前倒しは厳しい」と声をそろえる。

 各社が昨年に終電繰り上げを表明したのは、夜間に実施する線路の保守作業の人手不足などに備え、始発までの作業時間を延ばして確保するためだ。鉄道関係者は「仮に苦労して前倒ししても、感染対策になるとは思えない」と不満を漏らす。

 代替案として、現行ダイヤのまま深夜の列車を回送運転にすることなどを考えているもようだ。ある私鉄社員は「他社と直通運転しているので、調整は簡単ではない」とため息をつきながらも「何もしないわけにはいかない」と対応を急ぐ。

 JR東や西武鉄道も「何らかの形で終電を繰り上げる方向で検討する」との立場だ。小田急電鉄は「乗客への周知は行政も協力を」と求めた。

 事業者以外からも懸念が出ている。国交省幹部は「急な話で事業者が付いていけるか」と気をもむ。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は「都知事の考えも一つの見識。賛否両論があると思う」と話している。

 関西大の宇都宮浄人教授(交通経済学)は「要請は理にかなわず、危機感を持たせるための政治的なメッセージという印象だ」と分析。その上で「コロナ禍では公共交通機関も柔軟に対応できる姿勢が望まれる。急なダイヤ変更など分かりにくい点があっても、乗客は受け入れる必要があるだろう」と話した。

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