【第27回地球環境大賞】特別寄稿 COP23を振り返って(3-3)

COP23の会場近くで行われていた化石燃料反対のパフォーマンス
COP23の会場近くで行われていた化石燃料反対のパフォーマンス【拡大】

  • ドイツパビリオンで行われた長期目標に関するサイドイベント。右から2人目がドイツ環境省のカーステン・ザッハ氏

 ■ドイツ2020年の目標達成ほぼ絶望的

 COP23の議論が停滞することを見越して、COP期間中にドイツの産業連盟やシンクタンクを訪問しヒアリングを行ってきたこともあり、ここでドイツのエネルギー政策に目を転じたい。COP23の期間中の演説で、メルケル独首相は、2020年目標の達成がほぼ絶望的であることをかなり正直に述べた。ドイツの2020年目標未達については、以前から研究機関が指摘してきたが、ドイツ環境省が2017年10月、「マイナス40%という2020年削減目標対して、31.7~32.5%と大幅未達となる見通し」との試算をまとめていた。

 ◆石炭・褐炭火力減らず

 未達の理由は、再生可能エネルギーの大量導入には成功したものの、石炭・褐炭火力の稼働が減らせていないことにある。COP23期間中のボンでは、市民も参加した反石炭デモも行われていたが、ドイツの電気の約4割が石炭・褐炭で発電されていることはどれほど認識されていただろうか?

 本来は、固定価格買い取り制度などの補助によって再エネの導入量を増やすと同時に、火力発電の低炭素化を図っていくことが期待されていた。排出量取引による炭素価格が石炭・褐炭火力に課されることで、天然ガス火力が競争力を高めることが期待されていたが、EU-ETS(EU域内排出量取引制度)の価格は1トン当たり数ユーロ程度に低迷し、価格シグナルとして有効には機能しなかった。筆者がCOP23期間中、インタビューに訪れたドイツ産業連盟やケルン経済研究所で、再エネに対する普及政策と排出量取引という「政策の重複」が非常に大きな非効率を生んだことを指摘する意見を聞いた。

 さらにメルケル首相が言及していたのは、雇用の確保である。ドイツ政府は石炭・褐炭産業など雇用が減っていく分野から、増える分野に人々が適応できるよう支援するとしている。ドイツ経済は現在、好調を維持しているが、新たに創出されるのはITなどのスキルを要求される雇用であり、数合わせで語るべきではないとして、ドイツ産業連盟は産業界の懸念を強く訴えていた。ドイツのエナジーヴェンデ(エネルギー転換)が足元では多くの課題を抱えていることは改めて論じることとしたいが、それでもドイツは2050年に向けて非常に野心的な長期目標を掲げている。2050年には80~95%の温室効果ガス(GHG)を削減し、2050年までにGHG中立を目指すことを原則としているのだ。

 ◆脱原子力、仏とは逆の判断

 COP23期間中にドイツ環境省がホストした長期戦略に関するサイドイベントに登壇したドイツ環境省のカーステン・ザッハ氏が「長期戦略の目的は、投資家に2050年に向けてのシグナルを出すこと」と述べた通り、これだけの社会変革を成し遂げるには政府が明確な方向性を示すことが必要であり、気候変動対策が閉じた議論になりがちなわが国はこの点は参考にすべきではないかと感じた。

 ただ、ドイツの2020年目標の達成は厳しく、2022年に脱原発をすればさらに目標達成は遠のく。カーステン・ザッハ氏が「脱石炭と脱原子力を同時に進めるのは非常にチャレンジングなことだ」とコメントしたことに対し、「どちらを優先するのか?」と問いかけると、「脱原子力はもう決まったことだ」との回答を得た。当面は温暖化緩和の目標達成よりも脱原子力を優先させるという判断がなされる可能性が高いという見解だろう。これはフランスとは逆の判断ということになる。フランスは、現在75%の原子力発電比率を2025年までに50%に減らすことにしていたが、これを延期するとしている。欧州では各国がバラバラの判断をするから、全体としてのレジリエンスが保たれているとも言えるだろう。一国の中でエネルギーミックスを考えていかねばならない日本は、自国の脆弱なエネルギー供給とどう向き合うべきか。

 現在、第5次エネルギー基本計画策定に向け議論が行われているが、長期的にみて世界のエネルギー消費量が増大することは間違いない。北朝鮮や中東問題など不安定要素も強まっている。

 改めてレジリエンス(強靭化)という観点から、わが国の環境・エネルギー政策について現実的な議論が進むことを期待したい。

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【プロフィル】竹内純子

 たけうち・すみこ 1971年東京都出身。慶応大卒。東京電力の尾瀬自然保護活動担当などを経て2012年からNPO法人「国際環境経済研究所」理事・主席研究員。筑波大客員教授。著書に「誤解だらけの電力問題」(ウェッジ)や「原発は“安全”か-たった一人の福島事故調査報告書」(小学館)など。

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【用語解説】パリ協定

 地球温暖化の深刻な被害を避けるため、全ての国が温室効果ガスの排出削減に取り組むことを定めた国際協定。産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑えることを目指す。昨年発効し、現行の京都議定書を引き継ぎ2020年に始まる。各国が削減目標を掲げ、国内対策を実施。取り組み状況は5年ごとに検証し、目標の引き上げを図る。トランプ米大統領は今年6月「米国に不利益を強いる」と主張、離脱を表明した。

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