【第27回地球環境大賞】特別寄稿 COP23を振り返って(3-2)

中国パビリオンでのサイドイベント。中国交渉団のトップを長年務める解振華氏(右)と握手する国際エネルギー機関のファティ・ビロル事務局長
中国パビリオンでのサイドイベント。中国交渉団のトップを長年務める解振華氏(右)と握手する国際エネルギー機関のファティ・ビロル事務局長【拡大】

  • ドイツ・ボンで開かれたCOP23に参加した人たち(AP)
  • 国際熱核融合実験炉ITERのブース

 ■分断された米、存在感高めた中国

 NDCの進捗に対するレビューがどこまで機能するかがパリ協定の肝と言っても過言ではないが、その透明性に関わる議論でも途上国は二分論の世界に先祖返りしたがっている。先進国は、全ての国が共通のルールの下に報告を行うべきであり、パリ協定13条2項が定める「能力に照らして必要な場合には途上国に対して柔軟性を与える」ためには、柔軟な扱いを求める国がその理由を説明するなどの対応が求められるとしている。これに対し、中国などは、途上国は任意の報告で構わないとするなど、先進国との義務の違いをルールに盛り込むべきだと主張している。

 ◆議論の中心は資金問題

 何より議論の中心は資金問題であった。パリ協定9条は「先進国は、途上国への資金提供の義務を継続」するとしている。その上で、「(該当する場合には)資金提供や資金の動員に関する定量・定性の情報を隔年提出」することも義務づけている。先進国以外には「自主的に支援を提供することを奨励する」という文言を入れ込むことで、資金の提供主体が先進国に限らないことを確保したものの、先進国は資金提供の見通しや進捗の報告が義務となっている。

 そもそも予算で単年度主義をとる国が公的資金援助の見通しを示すことは困難だが、途上国はこの条文をどうルール化していくかに強い関心を示し、COPだけでなく、APA(パリ協定特別作業部会)でも議論すべきだとの主張を展開した。また、途上国は、京都議定書の下で設置された適応基金をパリ協定のもとでも継続して活用していくべきだと主張したが、先進国からすれば「緑の気候基金」も適応と緩和に半分ずつ使われるうえ、さらに適応基金の原資をどう確保するかの議論に時間を費やすことや基金を肥大化させることは避けたいところだろう。

 COP23では、初日から「プレ2020年問題」という言葉で先進国の2020年に向けた取り組みの進捗状況を議題とすべきだと主張する動きがみられた。これも2020年までに途上国に対して1000億ドルを下限とする資金動員を行うという先進国のコミットメントが予定通り進むのかが関心の中心だったと考えられるし、深読みをすれば、2020年目標の達成が厳しい先進国の弱みを突いて交渉を有利に進めようとする、途上国側の“地雷”だったと言えるだろう。

 総じてCOP23では、途上国側は2018年以降の交渉を有利に進める“地雷”を埋めることに成功し、先進国側は米国のパリ協定離脱宣言による交渉力低下や多様な課題を前に足元がぐらつき防戦に徹したと評価できるのではないか。

 ◆議長国フィジーの奮闘

 議長国フィジーの奮闘もあって、グローバル・ストックテイク(世界全体での進捗確認)のひな形になるとされる2018年の「促進的対話」について今後のプロセスが決定するなど、融和的雰囲気が維持されたことは歓迎すべきことだが、それは議論がまだ本格的な交渉のステージに至っていないことを意味する。時間的余裕のある2017年はまだしも、これで2018年にルールブック策定という成果を出せるのかとの危惧を抱かざるを得ない。

 パリ協定離脱を表明後、初めてのCOPとなった米国は、従前の3分の1程度とはいえ、50人弱の交渉団を派遣し、透明性に関する議論については共同議長を輩出するなど一定の関与をしていた。「米国民にとって望ましい条件の下で再び参加することについてはオープンであり続ける」と公式演説の中で述べたように、このプロセスからまったく引いてしまったわけではない。しかし米国政府としてパビリオンを出すことはせず、ローキーな対応となったことは否めない。

 一方、目立ったのは「もう一つの米国」である。トランプ政権のパリ協定離脱宣言に反発し、カリフォルニアやニューヨークなどの州知事、市長、大学などが署名した「We are still in」は、交渉会場のすぐ脇に特設テントを設けて温暖化対策への積極的な姿勢を示した。カリフォルニア州知事やゴア元副大統領の演説は拍手喝さいをもって受け入れられ、トランプ政権の無理解を徹底批判する発言も多く聞かれた。カリフォルニア州知事の言葉を借りれば「連邦政府だけが米国ではない」のは事実で、このアライアンスに参加する州のGDP(国内総生産)は計約7兆ドル、人口は1億3000万人にも上り、国家規模ではある。

 ただCO2排出量の合計は米国全体の20%程度であるうえ、政府全体の取り組みがなければカーボンリーケージが発生しやすいことには留意が必要だろう(政府全体としてコミットしたとしても国際的なカーボンリーケージは生じるだろうが、国内の方がよりハードルは低いだろう)。

 分断された米国の一方で、存在感を高めていたのは中国である。正式な交渉団以外にも、研究者やNGOなど中国からの参加者には会場で多く接する機会があった。

 国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル事務局長やカリフォルニア州知事を招いて次々とサイドイベントを開催しているのを見ると、温暖化対策に非常に積極的な国と感じてしまう。

 もう一つ筆者の関心を引いたのは原子力関連のブースやサイドイベントである。国際約束に基づきフランスに建設予定の国際熱核融合実験炉ITERのブースが出展されていたほか、ロシアが「nuclear energy as an essential for the green economy and sustainable development」というサイドイベントを実施した。実はCOPの場はどれだけいつまでに減らすかが主題でどうやって減らすかは各国のエネルギー政策に直結する上、原子力は核不拡散の要請もあることなどから、この「グリーンな世界」では温室効果ガス削減の手段として正面切って議論されづらい。しかし現在世界の原子力市場を席巻しつつあるロシアや中国などは、温暖化に対する原子力の貢献を謳うことで今後さらに売り込みを強化するであろうことが感じられた。