【Science View】

≪図発光遺伝子を組み込んだNG2細胞のイメージング≫背中の体毛を除去したラットを暗室に置き、高感度カメラで撮影した。毛周期に応じて発光の強さ(緑~赤)が変化している
≪図発光遺伝子を組み込んだNG2細胞のイメージング≫背中の体毛を除去したラットを暗室に置き、高感度カメラで撮影した。毛周期に応じて発光の強さ(緑~赤)が変化している【拡大】

  • 田村泰久氏
  • ≪図1910年以降、各国の研究所・大学から発見された新RI≫発見数は10年ごとの累計で、横軸は論文発表年を表す。2010-2020では、先に論文発表した59種と今回の73種を含めると合計132種の新RIが確定した(赤)。さらに現在解析中の約62種も含めると、総計約194種の論文発表が見込まれる。日本が他の4国を大きく抑えているのが分かる。
  • 福田直樹氏

 □理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター 生命機能動的イメージング部門 細胞機能評価研究チーム 副チームリーダー・田村泰久

 ■毛包イメージングによる毛周期モニタリング

 頭髪や体毛を作っているのは、皮膚の中にある毛包だ。毛包は死と再生を繰り返す細胞群を含んでおり、成長が終わった毛を脱落させ、新たな毛を産生する働きがある。毛が生えてから抜け落ちるまでを「毛周期」と呼び、成長期、退行期、休止期の3つのステージに分けられる。

 理研の研究チームは、毛包を構成するNG2細胞に着目した。NG2細胞は盛んに分裂する能力があり、脳では神経系のグリア細胞を作り出す。毛周期を観察するモデルとしてラット体毛の毛包を調べたところ、成長期、退行期、休止期の各ステージでNG2細胞の数が大きく変化していることが分かった。そこで、NG2細胞数の変化を皮膚の外から観察できれば、生きたままの状態で毛包のステージが分かると考え、遺伝子組み換えによりNG2細胞が発光する遺伝子改変ラットを作製した。このラットの背中の皮膚を超高感度カメラで撮影したところ、毛周期と一致してNG2細胞の発光が変化していた。また、加齢に伴う脱毛は毛周期の乱れが原因の一つだが、老齢ラットを観察した結果、NG2細胞の発光周期が不均一であったり、休止期に相当する発光しない領域が増加していることも分かった。

 今回開発した毛包イメージングは、皮膚の中にある毛包の活動を捉えることで、自然な状態の毛周期をモニタリングできる画期的な方法だ。今後、この方法が発毛剤による発毛促進効果の評価に適しているかなど詳細に検討する予定だ。

                  ◇

【プロフィル】田村泰久

 たむら・やすひさ 2004年関西医科大学大学院医学研究科博士課程修了、博士(医学)。関西医科大学博士研究員、理化学研究所研究員、上級研究員などを経て、2017年4月から現職。

 ■コメント=全身の組織幹細胞イメージング法を確立し、ヒトの病態解明や医薬品開発に役立てたい。

                ■ □ ■

 □理化学研究所 仁科加速器研究センター 実験装置運転・維持管理室 RIビーム分離生成装置チーム 仁科センター研究員・福田直樹

 ■73種の新同位元素を発見

 重元素は、中性子星合体のような特殊な環境下で、原子核が連続的に中性子を吸収する反応とβ崩壊との競合が起こり、その果てに不安定な放射性同位元素(RI)を経由して合成されたと考えられている。

 この重元素合成の謎を解明するには、それらRIのさまざまな性質を調べる必要がある。これまで、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー」に設置された超伝導RIビーム分離生成装置を用いた研究では、2007年に初めて新しいRIを発見して以降、59種の新RIの発見が論文発表されている。

 理研を中心とした国際共同研究グループは、ビーム強度が以前の約10倍に増強されたことから、11~13年に再び新RIの発見に挑んだ。実験では、ウラン-238およびキセノン-124ビームを光速の70%まで加速後、標的のベリリウムに衝突させて引き起こされる反応を利用してRIを生成し、収集・分析・同定した。その結果、原子番号25のマンガンから68のエルビウムまで、73種の新RIを発見することに成功した。これで累計132種の新RIの発見が確定したが、その後約62種の新RIの生成を確認しており、現在最終確認に向けた解析中だ。それが終了すると、総計約194種の新RIの発見が論文発表される見込みだ。これ含めると、RIBFでの10年以降の発見数は米国・英国・ロシア・ドイツを抑え、大きく加速することになる。

                  ◇

【プロフィル】福田直樹

 ふくだ・なおき 2001年東京大学大学院理学系研究科博士課程単位取得退学。博士(理学)。理化学研究所基礎科学特別研究員、東京工業大学特別研究員などを経て、2010年より現職。RIビーム生成に関わる研究開発や不安定原子核の構造研究を進めている。

 ■コメント=「未踏の原子核世界の開拓」を続け、宇宙における元素合成過程の解明や原子核構造の解明につなげたい。

                ■ □ ■

 ■理研が「スパコンを知る集いin大津」を開催

 理化学研究所は3月10日(土)に滋賀県大津市で「スパコンを知る集いin大津」を開催する。中学生以上の一般を対象にスパコンとは何か、「京」を中心とするスパコンを利用した研究とそこから生み出される成果、ポスト「京」開発への期待や可能性などについて、研究者3人が解説する。またプログラム内「ようこそ展示コーナーへ」では、「京」が設置してある部屋へ映像でご案内するバーチャルツアー、「京」の成果やポスト「京」の開発についてご紹介するパネル展示などを予定している。参加は無料(要事前申し込み)。

 ◇日時 3月10日(土)13:20~16:00(受付開始は12:50)

 ◇場所 ピアザ淡海ピアザホール(滋賀県大津市におの浜1-1-20)

 ◇詳しいプログラムなどは以下のホームページ参照

 http://www.aics.riken.jp/shirutsudoi/meeting29.html

 ◇問い合わせ

 理化学研究所計算科学研究推進室

 (電)078・940・5596

 E-mail:shirutsudoi@riken.jp