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「スピード感」の罠から逃れよ ノートルダム大聖堂火災が問うもの (1/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 スピードが重視され、何事もスピード感をもって進行することが良しとされやすい。特にIT普及後のビジネスの世界ではそうだ。当然ながら、災害の時でも人の命にかかわる状況での迅速な対応は欠かせない。(安西洋之)

 4月15日夜、パリのノートルダム大聖堂が火災で一部を焼失したのを受け、再建のために巨額の寄付のニュースが続いた。火事から3日以内に1000億円以上の寄付が集まる見込みがたったとされ、フランスのマクロン大統領は5年以内に修復を終えたいと話している。

 年間1300万人が訪問する大聖堂の事故は、多くの人の心に暗雲をもたらし、そのためにフランスの人たちが明日に希望がもてるように力になりたいとの想いをもつ。これは誰も否定できない。

 一方、一瞬にして集まった寄付金の額を知り、社会的不平等に不満をもつ人たちが快く思わないことで摩擦も生じている。ただ、ぼくはフランスの人たちの事情と心情に詳しくないので、これについては触れない。

 ぼくが気になるのは、巨額の寄付が即決過ぎないか、という点に尽きる。

 世界各地で起きる自然災害に他国の人たちが国境を超えて急遽駆けつけ、経済・物資の支援を行うのは、そこに生活する人たちの命を救い、日常生活への回復が急務だからだ。

 しかしながら、不幸中の幸いにして死亡者も出なかった大聖堂の火災である。もっと茫然自失とする時間があるのが自然ではないだろうか。そしてこの無残な大聖堂を前にさまざまに去来する想いを胸に、さらに日をおいて寄付を申し出るのが、あるべき時間の取り方ではないだろうか。

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