ローカリゼーションマップ

「スピード感」の罠から逃れよ ノートルダム大聖堂火災が問うもの (3/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 1980年代、ファストフードに対してスローフード運動が生まれ、その運動は食やローカルの価値だけでなく、ゆっくり歩を進める意味を問うた。この数年では、例えばデンマークの心地よいライフスタイルを「ヒュッゲ」という言葉で評価するブームが起きたりしている。

 慌ただしさによって心の余裕が失われるのは、個人が幸せであると感じる基礎力を減退させることであり、社会が索漠とする大きな要因となる。したがって、折に触れ進み具合をゆっくりさせることを意図的に喚起していかないといけない。ほっぽっておくと、ビジネスとテクノロジーだけの論理でスピードがアップする一方になってしまう。

 だからこそ、歴史的な建築物の火災事故を前にして、ビジネスで成功して社会をリードする立場にある人たちは、時計の針のスピードに敏感になろうと語りかける良い機会をつくることができたはずだ。それなのに、時間とお金を意のままに扱う独裁政権の指導者のような振る舞いをしてしまった。

 繰り返すが、巨額の寄付の是非を言っているのではない。物事の判断にはそれなりの時間をかけ、仮に心のなかで即決であっても、その決断を自分のなかで反芻する時間がないと結果的に社会の為にならない。そう言いたいだけだ。

【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちらから。

 安西さんがSankeiBizで連載している別のコラム【ミラノの創作系男子たち】はこちらから。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

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