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自己申告は他人への奉仕? 「信用するふり」が必要なくなった社会 (1/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 自己申告書と公的証明書。およそ30年前にイタリアに来たとき、この2つの力関係が日本と違うと知った。日本の役所では自分で書式設定した自己申告書は殆ど効力をもたず、一方イタリアは「まずは自己申告書を出してみればいい」という世界だった。

 はじめは何をどう書けば良いのかさっぱり分からないので、とにかくイタリア人の友人や知人の智恵も借り、いろいろなパターンの自己申告書をだんだんと書けるようになってきた。いずれの組織にも頼らず、1人でカオスな社会に対峙していると思える、万能感をかなり味わえる経験だ。

 しかしながら、欧州が行政システムとして統合され、役所のコンピューターシステムが必要書類を確定することが増えるにつれ、じょじょに自己申告書が通用しなくなってきた。「…あるいは相当する書類」ではだめで、色々な手続きで、公的機関なりが発行した証明書の提示を求められることが多くなる。

 これは「あなたを信用する」という社会から、「あなたを信用してよいかどうか分からない」という社会への移行なのだろうか。

 そういえば、ミラノの地下鉄の改札の仕組みも昨年から変わってきた。それまでは入場のときにチケットを機械に入れ改札の時刻を刻印し、降車して改札を出るときはフリーパスだ。

 だが今は改札を出るときもチェックを受ける。

 そのかわりデビットカードやクレジットカードが改札で使えるようになった。このために改札のシステムを全面的に見直したのか。

 他方、バスやトラムは乗車した時にチケットに時刻を刻印し、その時刻から一定の時間は乗り放題である。このシステムは以前と変わらない。だが、この数年、抜き打ちの検札が多くなった。

 手っ取り早い財源確保が必要との背景があるだろうが、古きよき「あなたを信用する」が通用しなくなってきた証拠だろう。

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