タイエリ峡谷鉄道の最大の魅力は手付かずの自然(写真はダニーデン鉄道より提供)【拡大】
窓を開けると、ひんやりとした透明な風がさっと吹き抜けた。車掌のジュリアンさんいわく、この日の外気はプケランギ駅付近で約7度。ニュージーランド南島は、冬晴れならあまり寒さが厳しくないそうだ。雪など天候が理由で運休になることはほぼないため、タイエリ峡谷鉄道は通年運行。観光客はスケジュールに組み込みやすい。
一般的には、トレッキングやピクニックを楽しめる夏がトップシーズンだが、鉄道ファンには冬がおすすめ、とジュリアンさんは言う。「夏はお客様が多く混雑してしまいます。冬のほうが鉄道写真をじっくり撮れますよ」。
観光列車らしく、見どころに差しかかると車内にアナウンスが流れるが、録音を流すのではなく生放送で話すのもジュリアンさんの仕事。沿線を知り尽くしたベテラン車掌ならではの、ライブ感溢れる案内が楽しい。
かつては運転士として、タイエリ峡谷鉄道を毎日のように運転していた。培われた経験により、今でも体感で速度がわかる。ジュリアンさんの評価では、三菱重工製DJ型ディーゼルエレクトリック機関車はポテンシャルが高いが、レールは木製部分と鉄製部分があり、100年以上前に敷設された木製レールの安全性を考えると、最大時速は70km(鉄製部分は80km)程度に抑えるのが望ましいとか。タイエリ峡谷鉄道は、のんびりと車窓を楽しむシーニックトレインなので、通常は時速40kmほどでのんびり走行している。