Science View

イネの収量に関わる遺伝子の同定/クーパー対を2本の細線に弾道的に分離 (1/2ページ)

 イネの収量に関わる遺伝子の同定(理化学研究所革新知能統合研究センター 遺伝統計学チーム 特別研究員・矢野憲司)

 イネの収量は、イネの丈や穂の数、穂の構造など、複数の草型の要素により決定される。このような複雑な要素を解析し、それに関わる遺伝子を同定するには、新しい解析手法が必要だった。

 人工知能を用いた「機械学習」は、分類や予測を行うための統計学的な算法であり、解析データから特徴量を抽出できる。その一つに、事前情報がない状態で特徴量を抽出する「教師なし機械学習」がある。「ゲノムワイド関連解析」は、形質の違いとDNA配列の違いとの関連をゲノム全体にわたり調べることで、対象となる形質と関連する遺伝的変異を統計的に検出する方法である。

 今回、理研と名古屋大学を中心とした研究グループは、日本で育成されたイネ169品種を用いて、草型の指標となる8形質を計測し、教師なし機械学習の一つである「主成分分析」と従来の解析手法であるゲノムワイド関連解析を組み合わせることで、草型に関わる遺伝子の同定を試みた。その結果、イネの収量を制御する14の候補遺伝子が見つかり、その中には植物ホルモンで植物の丈に関わる「ジベレリン」のシグナル制御に関わるOsSPYが含まれていた。この遺伝子に着目し、分子遺伝学的実験により検証したところ、イネの丈だけでなく、穂の数、穂の構造の制御に多面的に関わっていることが明らかになった。

 本研究成果は、イネの収量増加に貢献すると期待できる。また今後、本研究で使用した解析手法を、イネ以外の作物にも応用することが可能である。

【プロフィル】矢野憲司

 やの・けんじ 名古屋大学大学院生命農学研究科生命技術科学専攻博士後期過程修了、博士(農学)。東京大学農学生命科学応用生命化学専攻植物栄養・肥料学研究室特別研究員(日本学術振興会特別研究員-SPD)などを経て、2019年4月から現職。

 ■コメント=生物学と情報科学の統合で膨大な生命情報から有益な遺伝的メカニズムを解明したい。

 クーパー対を2本の細線に弾道的に分離(理化学研究所創発物性科学研究センター 量子機能システム研究グループ 基礎科学特別研究員・松尾貞茂)

 赤矢印は、本研究で同定した収量に関わるゲノム領域を示す。この領域には、14の候補遺伝子が見つかり、その中に植物ホルモン「ジベレリン」のシグナル制御に関わるOsSPYが含まれていた。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus