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相続税対策で「一括贈与」、選択肢はそれだけ? ラッキーで済ませるな (1/3ページ)

鈴木暁子
鈴木暁子

 親にとって、生前に「贈与」するのは、相続税対策として「相続財産を圧縮できる」という経済的メリットと、「子や孫の役に立てる」という精神的満足の一石二鳥です。一方、そろそろマイホームが欲しい、子どもの教育費がかかるなど懐具合が厳しい子どもとしては、親が援助してくれるというのであれば、断る理由はないでしょう。

 贈与自体はメリットのある制度です。しかし、目先のメリットだけにとらわれて行うと、後々「こんなはずじゃなかった」と悔やまれることもないわけではありません。また、贈与は相続とも密接な関係があります。贈与税や相続税を払うことになった場合、課されるのは受け取る側です。贈与のしかたを親は十分に考えなければいけませんし、子どもの側もメリットだけとは限らないことを肝に銘じておきましょう。

教育資金を非課税で贈与する方法は一つではない

▼「教育資金や住宅購入資金なら、大きな金額でも非課税の制度があるんですよね?」

 最近、60~70代の企業OBの方の相談が続いたのですが、いずれも贈与に関するものでした。贈与の相談では「教育資金の一括贈与」や「住宅取得資金等贈与」が多いと感じています。

 教育資金を一括贈与する場合、子・孫1人につき1500万円までの贈与は特例の対象になり、非課税になります(国税庁HP「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」)。

 子や孫が住宅を取得するための資金の贈与も、一定の条件を満たせば、1200万円まで(2021年12月31日まで)は非課税です(国税庁HP「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」)。

 これらを検討する人が多いのは、贈与する側にとって、目的が明確ですし、効果が目に見えやすいからかもしれません。ところが多くの方は「まとまった資金を贈与しても非課税」というところだけインプットされており、さまざまな留意点があることは二の次になっています。

 たとえば教育資金の一括贈与の相談で「いくらくらいがいいですかね」という質問。孫の進路によって大きく変わる教育費ですから、どのような進路を希望しているかを子どもと十分話すことが必要でしょう。ただ難しいことに、本来ライフプランを考える際には支出は多めに見積もるという原則から、教育費は首都圏であれば中学から私立で見積もることも多く、子どもの側も「とりあえず多めに」という気持ちが強くなる傾向があるように思います。

 しかしこの制度で最も注意しなければいけないのは、原則、贈与を受ける者が30歳になるまでに非課税拠出額を使い切らず残余額があった場合、そこには贈与税がかかってしまうということです。また、この制度を利用するには、金融機関と契約を結び専用の口座を開設する、払出しの際は所定の手続きがあるなど面倒も多いのです。

 教育資金であれば、実は一括贈与を使わなくても非課税で贈与できる方法があることをご存知ですか? 国税庁のHPに記載がありますが、贈与税がかからない場合として、教育資金や生活費が列挙されています。

2 夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの

ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。

 なお、贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります。

国税庁HP「贈与税がかからない場合」より抜粋)

 この方法は「都度贈与」と言われ、必要な都度、直接それ(この場合であれば教育資金)に充てるためのものであれば贈与税がかからないのです。

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