日本株ダークプール存在感 中小型移行、シェアで私設取引抜く

東京証券取引所のトレーディングフロアを見学する男性(ブルームバーグ)
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 日本株市場で、気配情報が非公開のダークプールの存在感が増している。秘匿性に加え、機関投資家の間で少しでも注文執行コストを抑える最良執行意識が高まっていることが人気の背景だ。中小型株など取引対象の変化もあり、シェアは先行した私設取引システム(PTS)を既に上回る。

 東京証券取引所によると、証券会社が取引所を介さない自社システムで投資家の売買注文を付け合わせるダークプールのシェア(市場外を含む東証全体の売買代金に占める割合)は2014年をピークに一度減ったが、その後再び増え、16年は過去最高の5.6%に達した。

 一方、市場間競争を促すため、取引所集中義務を撤廃した1998年の金融システム改革法で生まれたPTSのシェアは、日本証券クリアリング機構での清算・決済が始まった10年以降に急増。12年に5%ルール(公開買い付け規制)の適用除外になると、翌年には7.5%と最高を記録した。しかし、一時7社あった業者は2社に減り、ダークプールの浸透もあって、昨年は3%台まで下がった。

 ◆保守的投資家採用か

 東証株式部の大墳剛士株式総務課長は日本のダークプールの成長について「HFT(高頻度取引)が流動性を提供し、それにぶつかってくる機関投資家のフローも増えている」と分析。特に15年以降の増加は「保守的な機関投資家が使い始めた可能性がある。市場シェアはスムーズに伸びており、認可業務のPTSを抜き、もはや市場ではないとは言い切れない時期に来ている」と話す。

 大墳氏によれば、ダークプールでの取引は従来、TOPIXコア30やラージ70など大型株中心だったが、最近はミッド400やスモールなど中小型株に変化。同時に、1取引当たりの売買高は12年の800株から昨年末には300株以下まで低下した。ダークプールの取扱社数は、20社程度で安定的に推移しているとみる。5年以内にダークプールのシェアは6~7%程度まで上昇する、と大墳氏は予想した。海外でのシェアは米国が15%程度、欧州が10%程度。

 ダークプールで取引対象が中小型株に移るきっかけとなったのは、14年の呼値単位(注文値段の刻み幅)の変更だ。流動性の高いTOPIX100構成銘柄の取引での呼値が縮小し、大墳氏は「ダークプール内で主にマーケットメーカーとしての役割を果たしているHFTは収益のスプレッド(価格差)が減少し、その結果として取引銘柄をよりスプレッドの大きい中小型株にシフトさせた」と言う。また、小口化は機関投資家がマーケットインパクトを引き起こす大型注文をアルゴリズムでスライスし、小型化していることが影響した。

 ◆個人にも広がる動き

 野村総合研究所の大崎貞和主席研究員は、ダークプールシェアの上昇理由の一つに「最良執行意識の高まり」を挙げる。国際比較で日本株市場の流動性は極めて高いとはいえず、執行コストの面でも方法が多様で安いニューヨーク株市場に比べ出遅れていると指摘。「機関投資家がマーケットインパクトを避けつつ、大口注文をできるだけ短時間で処理するニーズがある」とみる。

 日本では東証が現物株市場をほぼ独占し、受益者から機関投資家へのパフォーマンス改善圧力が年々高まる中、機関投資家が最良執行の際に重視するより有利な取引価格を探せば、呼値単位が相対的に小さいダークプールに注文は流れやすい環境だ。

 ただ、東証の大墳氏はダークプールの課題も徐々にクローズアップされてきたと指摘。海外で不祥事発生の事例もあり、「取引所に次いで規制の厳しいPTSとの関係を考えても、情報開示規制もないダークプールとの逆転は注視すべきだ」と話す。現状、適切な情報が十分に行き渡っていない面があるほか、ダークプールへのアクセスが「もし個人を巻き込むようなことになれば、分かりやすさが必要」としている。

 SBI証券は14年10月から先物・オプションのみ個人向けダークプールのサービスを提供、みずほ証券は15年から現物のみで個人向けダークプールを展開している。

 一方、ドイツ銀行のハニ・シャラビ氏は「日本のダークプールがアジアで最も大きいのは事実」としつつ、懸念されるような水準ではなく、「最近成長してきたという感じもあまりしない」と言う。アジアのダークプールはばらばらな運用が成長の限界につながっており、欧米のように一緒にダークプールを組む動きが出てくれば、成長するとの見方を示す。

 金融庁の金融審議会は昨年12月にまとめた市場ワーキング・グループの報告で、ダークプールの位置付けについて「引き続き、金融商品取引業者に対する規制を通じて実効的な監督に努めるとともに、将来的に新たな課題や環境変化が生じた場合には必要に応じ、制度的な対応を検討する」とした。

 証券監督者国際機構(IOSCO)の定義では、ダークプールは「電子的にアクセス可能で、取引前透明性のない(気配情報を公表しない)取引の場」とされている。(ブルームバーグ Toshiro Hasegawa、Min Jeong Lee)