【論風】2018年の世界経済 分かれる成長率見通し

 □青山学院大学特別招聘教授・榊原英資

 国際通貨基金(IMF)は昨年10月に2017年の世界の成長率は3.6%、18年3.7%と予想し、7月時点の予測からそれぞれ0.1%引き上げた。IMFチーフエコノミストのモーリス・オブストフェルド氏は「政策当局者も市場も油断すべきではない」と警告しているものの、米国を中心に世界経済は回復基調にあると判断しているのだ。

 米国の成長率は17年2.2%、18年2.3%と予測し、7月時点の予測(両年とも2.1%)から上方修正している。ユーロ圏についても17年は2.1%、18年も1.9%とし、3カ月前からの予測からいずれも0.2%引き上げている。世界貿易の拡大や内需の持続的強さ、政治リスクの後退で見通しは力強さを増していると分析している。

 日本の成長率は外需や財政刺激策の継続が牽引(けんいん)役となっており、IMFは17年の成長率1.5%と7月時点より0.2%上方修正している。18年の成長率は0.7%と鈍化を見込むものの、3カ月前の予想より0.1%高い水準としている。

 新興市場国については、17年、18年の成長率は加速し、16年の4.3%から17年には4.6%、18年には4.9%に伸びるとの予測だ。中国は16年の6.7%から17年6.8%、18年6.5%と6%台の水準で大きく伸びてはいないが、インドや東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国が18年には大きく伸び、それぞれ7.4%、5.2%になるとしている(16年はインドが7.1%、ASEANは4.9%)。

 また、資源価格の下落で16年にはマイナス成長に陥ったブラジル、ロシア(ブラジルの16年はマイナス3.6%、ロシアはマイナス0.2%)も、資源価格の回復とともに17年にはプラスに転じ、18年にはそれぞれ1.5%、1.6%の成長率を達成すると予測されているのだ。

 ◆OECDは慎重

 経済協力開発機構(OECD)も昨年11月28日、世界経済成長率見通しを発表しているが、IMFと同様、17年は3.6%、18年は3.7%としている。ただ、OECDは19年の見通しも今回改めて公表しており、18年より減速して3.6%としている。減速の理由は、投資鈍化や債務水準の上昇、主要先進国の金融緩和が縮小傾向に変化することなどとされている。

 OECDのチーフエコノミスト、キャサリン・マン氏はロイター通信に対し、「現在の状況は良好だが、民間セクターの力強い活動や資本の再整備、実質賃金上昇につながらない場合は今の成長率を維持することはできない」との見方を示している。

 日本については17年の見通しを従来の1.6%から1.5%に小幅下方修正している。18年は1.2%、19年は1.0%と成長率は緩やかに鈍化するとの見通しだ。

 また、少子高齢化による人手不足の深刻化で、賃上げが加速し、それに伴って物価も上昇するが、政府・日銀が目標とする2%には遠く届かないとの見立てだ。

 ◆日銀も出口戦略探る

 民間金融機関も世界経済見通しを発表しているが、英バークレイズと米ゴールドマン・サックスは18年の成長率を4.0%とし、最も強気の見方を示している。

 他方、米モルガン・スタンレー、仏ソシエテ・ジェネラルはIMFと同様、3.7%、米シティーグループは世界的な金融引き締め策を理由に3.4%と最も弱気な予測を発表している。確かに、米連邦準備制度理事会(FRB)は09年以来の金融緩和から引き締めに転じており、欧州中央銀行(ECB)も金融緩和姿勢を徐々に転換し始めている。

 日銀は今のところ金融緩和政策を維持しているが、市場は「そろそろ日銀も緩和からの出口を模索し始めた」と読んでいるようだ。

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【プロフィル】榊原英資

 さかきばら・えいすけ 東大経卒、1965年大蔵省(現財務省)入省。ミシガン大学に留学し経済学博士号取得。財政金融研究所所長、国際金融局長を経て97年に財務官就任。99年に退官、慶大教授に転じ、2006年早大教授、10年4月から現職。75歳。神奈川県出身。