カナダが米をWTOに提訴 NAFTA交渉再開前に強硬姿勢

 カナダのトルドー政権は10日、米国が相殺関税や反ダンピング(不当廉売)関税などの貿易制裁措置を不当に活用しているとして、世界貿易機関(WTO)に提訴したことを明らかにした。北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の会合を控え、トランプ政権との対立をエスカレートした格好だ。

 米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は「カナダの申し立ては事実無根だ。カナダが相互に有益な貿易のために尽力しているという米国の信頼を低めるだけだろう」と激しく批判している。

 提訴は昨年12月20日に行われた。カナダのほか、中国、ドイツ、日本など米国の主要貿易相手国に対する米政府の関税に言及している。カナダのMAAW法律事務所で両国間の通商問題を扱う弁護士、マーク・ワーナー氏は「カナダが国際的な貿易システムを守るために立ち上がったかのようだ。同国の姿勢は非常に攻撃的だと思う」との見方を示した。

 カナダのフリーランド外相は、提訴は同国産の針葉樹製材をめぐる通商問題に起因するものだと説明。「WTOへの提訴は、カナダで林業に携わる多数の中間所得層の雇用を守るための取り組みの一環だ。引き続き米国側に働きかけ、長期的な合意を締結できるよう促していく」と表明した。

 両国の貿易摩擦は既に、ボーイングやボンバルディアといった航空機メーカー、材木メーカーや自動車業界に及んでいる。

 これらの業界の供給網を支えるNAFTAの先行きも不透明だ。再交渉の第6回会合は23日からカナダ・モントリオールで開催されるが、カナダ政府関係者は10日、トランプ米大統領が以前から繰り返し警告しているNAFTA離脱を実行に移す可能性が高くなっていると発言した。カナダ政府は多大な影響が予想される業界に関し、あらゆる選択肢の検討を始めているという。カナダ大手銀ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)のデービッド・マッケイ最高経営責任者(CEO)も今週、米国の正式離脱の可能性が高まっていると警鐘を鳴らした。

 ロイター通信によると、トランプ氏が離脱手続きを開始した場合、メキシコは交渉から離れる方針だ。一方、離脱の通告が必ずしも実際の離脱に至るとはかぎらないため、カナダは交渉を続ける姿勢を示している。(ブルームバーグ Josh Wingrove、Chua Baizhen)