インフレ率2616% ベネズエラ経済、失政のツケ 独裁強めるマドゥロ大統領、再選へ政敵排除 

 【リマ=住井亨介】危機的状況にある南米ベネズエラ経済の深刻度が増している。経済失政で財政が逼迫(ひっぱく)していたところに、通貨の過剰供給が加わって昨年の消費者物価上昇率(インフレ率)は2616%と初の4桁台を記録。国民の多くが食料、医薬品の入手に苦しみ、餓死者も出ている。マドゥロ大統領は状況を転換させる“有効打”を繰り出せない中、独裁傾向を一段と強めている。

 ■「4月危機説」

 野党が多数を占めるベネズエラ国会が8日に発表した2017年のインフレ率は、経済状況の深刻さを改めて突きつけた。

 同国は世界最大の原油埋蔵量を誇りながら、政権によるバラマキ政策や無理な価格統制がたたって国内製造業が衰えた。さらに、国際原油価格の低迷や米国による経済制裁などで外貨不足に陥ったことで、食料や医薬品など物資の不足が進み、物価が急激に上昇している。

 約3割の国民は1日の食事が2回以下で、約75%が体重を平均19ポンド(約8・6キロ)減らしたとのデータもある。昨年末には、政府からのクリスマス用豚肉の供給がなかったことをきっかけに、市民による抗議デモも起きた。昨年の反政府デモでは120人以上の市民が死亡しており、政情不安は増している。

 4月には国債や国営企業の社債の大規模返済が迫り、昨年11月には金融業界団体が一部デフォルト(債務不履行)も認定している。支払いは現在継続されているが、経済制裁により米国を経由する送金が止まり、償還は滞り気味となっている。

 こうした中、マドゥロ氏は今月5日、昨年12月に導入を明らかにした独自の仮想通貨「ペトロ」について1億単位の発行を命令した。「1ペトロは同国産原油1バレルの価格に相当する」(マドゥロ氏)と原油に裏付けられた仮想通貨であり、金融取引を実行できるようにして制裁を克服する狙いがあるが、国際市場で同国政府の信用は落ち込んでおり、状況の打開は疑問視されている。

 ■再選へ着々

 窮状を乗り切るため政権内では昨年末、今年後半とされていた大統領選を2~3月に前倒しし、「4月危機」の前にマドゥロ氏再選を目指す案が浮上した。だが、ここ最近の原油価格の上昇によって当面の危機は遠のき前倒し案は消えた。

 マドゥロ氏は、昨年8月に政権派のみで構成される制憲議会を発足させ、野党が多数派を占める国会から権限を剥奪して独裁を確立。政権与党は同10月の全国知事選で勝利したのに続き、同12月の全国市長選でも大勝した。

 最高裁判事もほぼ与党系で占められ、三権を掌握したマドゥロ氏が政敵を排除し、着々と権力基盤を固めている。一方、分裂状態の野党側は有力候補が政権側の工作で次々と失脚させられるなど、統一候補の擁立もままならない状況となっている。

 現地の外交筋は「制憲議会が権力を握り、何でもできるようになった。選挙を急ぐ必要もなくなり、すべてはルールを突然変えられるマドゥロ氏次第だ」と指摘。政権交代による事態打開の期待はしぼみつつある。