FCA、メキシコから米移管 「ラム」生産、減税受け10億ドル超投資

 欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は11日、米ミシガン州デトロイト近郊のトラック工場に10億ドル(約1112億7000万円)超を投資すると発表した。2500人を新たに雇用し、大型ピックアップトラック「ラム」の生産をメキシコから移管する。米国の法人税引き下げを受けての決定だという。

 同社は従業員約6万人に対し、1人当たり2000ドルのボーナスも支給する予定。マルキオンネ最高経営責任者(CEO)は「減税で受ける恩恵を従業員と配分することや、米国の事業環境の改善に投資で応えることは当然だ」と発表した。

 生産移管はFCAにとって米国の通商政策変更を見据えたリスクヘッジにもなる。トランプ米大統領が北米自由貿易協定(NAFTA)を離脱または大幅に変更すると示唆しており、自動車業界は大打撃に身構えている。

 ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネスのエリック・ゴードン教授は「(米政権が)NAFTAを離脱または国内の製造業に有利に働くように改定する可能性が高まる中で、今回の投資は保険となる。ミシガン州の自動車業界従事者にとっては久々の良いニュースだ」と論じる。

 米自動車業界調査会社オートパシフィックのアナリスト、デーブ・サリバン氏は「税制改革による恩恵が労働者まで非常に迅速に波及すると示されたことは、政権には良い兆候だ。FCAにとっては、国内の雇用数を政権に示し、税制改革の恩恵を経済に還元するとのアピールにもなる」と分析した。

 ラムを生産していたメキシコの工場は、商用車の生産に切り替える。FCAは1年前、ミシガン州ウォーレンの工場への投資を発表した際、同工場でもいずれ大型ラムの生産が可能になるとの方針を示していた。

 FCAは来週、デトロイトで開催される北米国際自動車ショーで新型の「ラム1500」と「ジープ・チェロキー」を公開する。トラックやスポーツ用多目的車(SUV)の新型モデル発表が好感され、株価は17年にほぼ倍に達し、今年に入ってからも31%上昇した。

 11日には小売り大手ウォルマート・ストアーズも、トランプ政権が法人税を35%から21%に下げたことを受け、米国内での最低時給を11ドルに引き上げるほか、従業員に最大で1000ドルの特別ボーナスを支給すると発表した。(ブルームバーグ Jamie Butters、Ryan Beene)