【専欄】「一帯一路」資金・人材は十分か 拓殖大学名誉教授・藤村幸義

 中国が全面展開している「一帯一路」戦略は、沿線諸国の範囲が極めて広い。アジア、中央アジア、中近東、さらには欧州にまで広がっている。すでに動き出しているプロジェクトも、半端な数ではない。だが、それらの建設に必要な資金や人材は十分なのだろうか。しっかりとしたフィージビリティ(事業可能性)調査をせずに、やみくもに展開すれば、途中で挫折する案件も増えていかざるを得ない。

 昨年の中国の対外直接投資は、政府の規制によって大幅減となったが、その中で「一帯一路」関連はほとんど減っていない。むしろ全体に占める割合は12%へと増えている。これら諸国での工事の請負金額も大幅増となっている。

 プロジェクトの2大資金源はアジアインフラ投資銀行(AIIB)とシルクロード基金である。AIIBは発足から2年余りたつが、これまでの融資実績は24プロジェクト、42億ドル(約4500億円)にとどまっている。ムーディーズなどから最上位の格付け「AAA」を相次いで取得したので、今後は融資がしやすくなる。それでも対象は「一帯一路」関連のほんの一部でしかない。

 もう一つのシルクロード基金も、設立から3年間で17プロジェクト、70億ドルにとどまっている。習近平国家主席は昨年春の会議で、シルクロード基金を1000億元(約1兆7300億円)増やし約3000億元にすると約束した。それでもカザフスタンなど、特に戦略的に重要とされる国々への融資にとどまろう。

 残るプロジェクトの資金手当てはどうするのか。いま活発に動いているのが国家開発銀行と中国輸出入銀行である。融資の多くを「一帯一路」関連に振り向けているが、それでも相次いで浮上してくるプロジェクト案件の資金を全て賄えるわけではない。

 一方で、各組織の人材不足も指摘されている。AIIBの融資の多くが世界銀行やアジア開発銀行との協調融資なのは、自前の審査能力が不十分であるからといえよう。国家開発銀行と中国輸出入銀行の融資にしても、しっかりとしたフィージビリティ調査をせずに、国からの要請を受けてやむを得ず乗り出している案件が少なくない。中には既に暗礁に乗り上げている案件もあるようだ。

 「一帯一路」の目標は壮大で、世界経済への貢献も大きいものがあるが、じっくりと足元を固めて進んでいかなければ、思わぬ落とし穴に陥ろう。