対中方針、トランプ政権にジレンマ

 【ワシントン=塩原永久】米中両政府は北京で5日間にわたる貿易協議を開いたが、焦点の中国の経済改革に関して隔たりは埋めきれなかったとみられる。トランプ米大統領は首脳会談での事態打開を視野に入れるが、中国に改革を確約させることなく手を結べば、国内産業界や議員らから批判を浴びかねず、今後の対中交渉方針は難しい判断を迫られそうだ。

 クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は14日、「北京で(米中の)波長は合った」と述べ、協議進展を評価。協議最終日の15日に中国の習近平国家主席が米閣僚と面会するのは「よいサインだ」と喜んだ。

 ただ、次官級から閣僚級へと続いた米中協議は「進展が乏しかった」(ブルームバーグ通信)とされ、米国が要求した中国の経済構造改革で溝が残ったもようだ。トランプ氏は北京での協議前から「重要な問題」が積み残されていると指摘し、知的財産権侵害や技術移転の強要を中国が解消するよう迫っていた。

 トランプ氏は「尊敬する友人」と公言する習氏との首脳会談を検討している。ただ、交渉期限の3月1日までに妥結にこぎ着けられるほど米中間の距離は縮まっておらず、クドロー氏は「何も決まっていない」と述べつつも交渉期限延長の可能性を否定しなかった。

 米国と中国が昨夏から互いの輸入品に関税を上乗せし、貿易摩擦が激化。世界景気の先行きには暗雲が垂れ込め始め、米連邦準備制度理事会(FRB)も利上げの一時停止を示唆した。景気拡大を追い風に底堅い支持率を維持してきたトランプ氏に、中国との一段の摩擦激化を避けたい思惑が働いても不思議ではない。

 一方、不公正な貿易慣行の是正を中国に求める米国内の声も根強い。中国は米国産大豆や半導体の大規模輸入を提案したが、ルビオ上院議員(共和党)は米紙への寄稿で「トランプ政権は悪い合意を結ぶ誘惑に負けるな」と指摘し、構造改革に踏み込まない中国との合意に警告を発した。貿易相手への厳しい姿勢を打ち出してきたトランプ氏が、安易に中国と妥結すれば、逆に求心力を失いかねないジレンマを抱えている。