“恒久監視”も支持 中国社会に広がる疑心暗鬼 「信頼」生む手段に (1/2ページ)

北京にある天安門広場で記念撮影する男性と警察官。国外では評判が悪い中国の社会信用システムだが、国民からは支持を集めている(ブルームバーグ)
北京にある天安門広場で記念撮影する男性と警察官。国外では評判が悪い中国の社会信用システムだが、国民からは支持を集めている(ブルームバーグ)【拡大】

 政府にイノベーション(技術革新)はできないと誰が言ったのか。中国のある地方都市では最近、当局の信用ブラックリストに載る人物が500メートル以内にいる場合、その人物を特定し居場所をスマートフォン上の地図に表示するシステムを地元の裁判所が導入した。

 スターバックスで隣に座っている人物が裁判所が命じた罰金支払いを済ませていないかもしれないと思うなら、このシステムでピンポイント確認し、ソーシャルメディアを介してその情報を拡散することもできる。その気になれば当局への通報も可能だ。

プライバシー二の次

 身も凍るようなおぞましいシステムだが、かなり支持を得るかもしれない。既にデジタルとオフラインで行動記録を収集・統合・配布する官民のシステムがさまざまある中国だ。社会信用システムのネットワークは国外では不気味なデジタル刑務所と揶揄(やゆ)されるが、国内では著しく欠如する「信頼」を生み出す手段と見なされる。そのためなら、恒久監視とプライバシー喪失は大した代償ではないとの認識だ。

 多くの途上国に見られるように、中国では経済成長ペースに消費者・企業間の信頼醸成が追い付いていない。例えば化学物質が混入した国産粉ミルクで乳幼児が死亡、多数に健康被害が及んだ不祥事から10年経過した今でも、赤ちゃんを持つ親は国産品を避けるなど、中国食品メーカーに対する不信は拭いきれない。

 その上、中国は偽造・模造品の世界中心地だ。電子商取引最大手アリババグループやテンセント・ホールディングス(騰訊)など超有名企業が絡んでも偽物販売はなくならず、中国の電子商取引に関する信頼を全般的に損ねている。企業に対してだけでなく、出会い系サイトでの詐欺を含め、個人や家計を狙った犯罪が連日報じられ、全体的に疑心暗鬼が広がっているのが中国社会だ。

 政府は長い間、こうした状況を社会問題以上のものとして捉えてきた。中国がずっと目指してきた「消費基盤」の経済を築くには消費者の信用力が必要だとし、「信頼には報い、信頼できなければ罰する」メカニズムを備えた「社会信用システム」を構築するロードマップを2014年に投入。最も基本的な形は企業による個人の財務データ収集だが、政府の関心はそれよりはるかに広い。例えば旅行・観光当局は「野蛮」な旅行者に関する情報を集め公開し、そうした人物を旅客機や鉄道に搭乗させないように利用している。

14年にロードマップ