自然災害多発、鉄もパンも打撃 欧州気候急変の代償 (1/2ページ)

昨年7月、ギリシャ・アテネで発生した山火事の影響で被災した建物を調べる救助隊員(ブルームバーグ)
昨年7月、ギリシャ・アテネで発生した山火事の影響で被災した建物を調べる救助隊員(ブルームバーグ)【拡大】

 スウェーデン有数の製材会社セトラ・グループを率いるハンネレ・アルヴォネン氏は、想定外の新たなビジネス上の脅威への対策を練っている。それは北極圏南部で猛威を振るう定期的な山火事だ。

 ストックホルム北部のソルナ市を拠点とする同社にとって、2018年は厳しい夏だった。数カ月にわたる干魃(かんばつ)の中、森林に覆われたスウェーデン中部では広範囲で山火事が発生した。その跡地では、作業員が真っ黒に焦げた木の切り株を商品価値のある樹木へ回復させようと苦心している。

国際的取り組み主導

 これは欧州全域における、急激な気候変化の代償を浮き彫りにした事例の一つだ。独保険会社ミュンヘン再保険は、18年の自然災害に伴う保険金請求額は17年を150億ユーロ(約1兆8000億円)上回ると予想する。独鉄鋼メーカーのティッセンクルップから英ベーカリーチェーンのグレッグスに至る各種企業も、異常気象が製造と販売に打撃を与えていることを明らかにしている。「気象は何年も前から変わってきており、私たちは毎夏この事態に備えている」とアルヴォネン氏は語る。

 こうした企業の被害例は、化石燃料の使用削減に向けた国際的な取り組みを欧州が主導している理由を示している。昨年12月にポーランドで開催された国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)には約200カ国の代表が参加し、国際的枠組み「パリ協定」の実施ルールが策定された。

 米プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の調査によれば、欧州の企業経営者の約4人に1人が気候変動が事業に及ぼす影響を非常に懸念している。既に欧州全域の平均気温は産業革命以降で約1.4度上昇し、何世紀にもわたって欧州の気象を予想しやすくしていた偏西風に乱れを生じさせている。

 その結果が沿岸地域における大規模な洪水や、スウェーデンの山火事につながったような乾期の長期化だ。科学者はこうした個別の気象現象と温暖化を結び付けることに慎重なものの、洪水や山火事、干魃、暴風が発生する可能性は気温上昇とともに高まり続けるだろう。

 「気象は変わり続けていると言って間違いない。統計的分析によれば、異常気象の発生頻度は気温上昇に伴って増加している」と、英ケンブリッジ大学のダグラス・クロフォード=ブラウン教授(気候学)は語る。

 政治の風向きは必ずしも気候変動対策を支援していない。フランスでは昨年12月初め、マクロン政権が打ち出した燃料税引き上げに抗議する「黄色いベスト運動」が拡大した。独メルケル政権は、再生可能エネルギーを強化する政策が電気料金の高騰を招いていることを懸念する業界や消費者の声に耳を傾けている。イタリアのポピュリスト政権は債務削減に苦慮する中、再生エネ重視の方針を撤回した。

気温上昇が招く異常