暴れる地球

(下)水害被害、20年で10倍超に 中国、急ピッチで進む開発が誘発か

 広大な国土を抱える中国は、地球温暖化との関連が疑われる大規模災害が発生しやすい国の一つだ。1990年には水害の直接的な経済損失は239億元(現在のレートで約3690億円)だったが、2010年以降はたびたびその10倍を超える。

 一方で、経済成長に伴い急ピッチで進んだ土木工事で土砂崩れなどが起きやすくなった可能性もある。今年8月に上陸した台風9号では200万人超が避難し、70人が犠牲に。浙江省の被災地を訪れると、地元政府の防災・復興策に不満が渦巻いていた。

 浙江省に台風9号が上陸した8月10日、同省山間部の渓谷沿いにある山早村の集落付近で大きな土砂崩れが起きた。村民らによると、大量の土砂が豪雨で増水した川をせき止めてダムのように湖を形成、すぐ上流にある集落が10分ほどで沈んだ。夜明け前の出来事だ。

 「早く上がってこい。急げ」。自宅の2階に駆け上がった徐定玉さんは1階の妻に向かって叫んだ。胸まで水に漬かった妻の手をつかんだが、妻は足元の階段が崩れ濁流にのまれて死亡した。「いい女房だった。これからどうやって生きていけば…」と涙を流す。双子の孫らも命を落とした。水位は場所によっては住宅の4階に達し、多くの家が流された。

 地元政府は村民の移住計画を打ち出し、住宅の無償提供を決定。10キロ以上離れた町に集合住宅の建設を始めた。ただ林業の男性は「山に通えなくなる」と移住を拒む。

 別の村民も「私たちの意向を聞かずに発生後4日ほどで移住が決められた」と反発する。移住の規模に比べ建設計画の規模が極端に大きいとして、村では「復興支援に名を借りた都市開発だ」とささやかれている。

 土砂崩れは集落のある渓谷をまたぐ高速道路の高架橋下で起きた。崖上部にある橋脚の根元が崩れて剥き出しになり、谷底まで数十メートルにわたり斜面が崩壊。村では高架橋が土砂崩れの原因だと指摘する声が出ている。

 道路の開通は10年。村民らによると、大雨のたびに高架橋からの排水が斜面に大量に流れ、地盤が弱くなっていた可能性がある。村民らは「科学的に原因を調査し、責任を明らかにしてほしい」と訴えている。

 村で生まれ育った60代の男性は「いままでこんな災害はなかった」と話す。中国では各地で経済振興のため大規模な土木工事が相次ぎ、環境に深刻な影響をもたらしてきた。温暖化の影響と相まって、今後も大規模な災害発生の恐れが大きい。政府の対応のまずさが続けば国民の不満は蓄積するばかりだ。(浙江省山早村 共同)

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