海外情勢

テスラが挑む、牙城ドイツ ベルリン近郊に「ギガファクトリー4」を建設 (1/2ページ)

 米電気自動車(EV)大手テスラは自動車大国ドイツの首都ベルリンで、米国、中国拠点に次ぐ同社4番目の工場「ギガファクトリー4」の建設準備作業を開始した。年央に着工し、2021年7月の稼働を目指す。地場自動車各社が競争激化に向け身構えるのをよそに、新工場の立地自治体は地域経済活性化への期待に沸き立っている。

 来年7月稼働目指す

 新工場建設予定地であるベルリンの南東、グリュンハイデの森林地区では、作業員らがサッカー場200個分余りの場所で第二次世界大戦時の爆発物を除去するローラー作戦を展開している。

 テスラはここで1万2000人を雇用し、年間最大50万台を生産。フォルクスワーゲン(VW)など地場の自動車大手に戦いを挑む。爆発物の除去後に土地造成の第1段階として、数千本の伐採作業がスタート。

 2つの湖に挟まれた静かで小さな町グリュンハイデは、20年前も、BMWの工場を誘致しようとしたが、東部のライプチヒに敗れた経緯がある。今回はこの轍(てつ)を踏むまいと、テスラが最初に欧州工場の建設地としてドイツに関心を表明すると、町の役員らが直ちに行動。工業用地として確保している区画があることや、高速道路や鉄道に容易にアクセスできる点をアピールした。

 アーネ・クリスティアーニ市長は壁にテスラの工場建設計画の地図を掛けた自身の執務室で、「今回のテスラによる投資はまたとないチャンスだ。ここ数年、優れた教育を受け、大学の学士号を得た若い人材が地元に残る選択肢はなかったが、新工場はその可能性を提供する」と期待をにじませる。

 テスラの申請書類によると、同工場はバッテリーのほかにもパワートレインやクロスオーバー型のモデルY、セダン型のモデル3、そして今後のモデルと、さまざまな自動車を生産することになる。

 生産棟の長さはタイタニック号の約3倍の744メートルに及び、プレスや塗装、座席の組み立てなどが行われる。敷地内にはこうした施設4個分のスペースがある。

 テスラのマスク最高経営責任者(CEO)はガソリンやディーゼルなど内燃機関車の本拠地ドイツで将来を賭けた戦いを挑んでいる。

 ドイツの自動車各社は長年にわたり、テスラを財務基盤の弱い新興企業であり、技術力でも既存の自動車各社に太刀打ちできないと見下してきた。だがマスクCEOは昨年11月、ベルリンで行われたイベントで、ドイツ進出のニュースをさり気なく披露し、地場自動車各社の経営者を動揺させた。

 ドイツの老舗プライベートバンク(PB)、バンクハウス・メッツラーのアナリスト、ユルゲン・ピーパー氏(フランクフルト在勤)は「マスク氏は最強のライバルがいる、世界的な自動車産業の牙城に乗り込もうとしている。ドイツの高賃金や強力な労組、高い税率を考慮して、他の海外自動車各社が数十年間、やらなかったことだ」と指摘する。

 欧州最大の自動車市場における工場設置は、マスク氏が描く世界展開の野望実現に向けた試金石となる。欧州の需要は横ばいで、買い手の地元ブランドへの愛着は強い。独自動車産業の労働コストは米国の約1.5倍。これはグリュンハイデから車でわずか1時間の距離のポーランドの5倍だ。

 一方、プラス面としては、EV組み立てにかける人員は少なくて済むし、ドイツは自動車専門家の人材が豊かだ。また、地の利という点でも、ドイツの政治の中枢に近いベルリン近郊は、ソフトパワー面の強みがある。

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