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波紋を広げる松井大阪市長の「新制度案」 総合区と広域一元化、曲折は不可避 

 大阪都構想が住民投票で否決された後、松井一郎大阪市長(大阪維新の会代表)が「対案」として議会提案を目指す方針を示した制度案が、波紋を広げている。松井氏は、都構想が目指した基礎自治の強化と広域行政の一元化を、「総合区」制度の導入と条例制定で実現させたい考えで、いずれも議会が可決すれば住民投票なしに実現できる。だが、自民党や共産党は反発しており、先行きは不透明だ。

 総合区は、大阪市を残したまま区の権限を強める制度。行政区と同じく市の内部組織という位置付けだが、区長は市議会の同意を得て選任する特別職で、市長への予算提案権があるなど「一般市並み」の権限を持つ。平成28年施行の改正地方自治法で、議会が可決すれば政令市に導入できるようになったが、まだ導入した自治体はない。

 大阪では27年の前回の住民投票後、公明党が大阪都構想の対案として導入を主張。吉村洋文・大阪府知事(大阪維新の会代表代行)の市長時代、現在の24行政区を8総合区に再編する案を取りまとめ、都構想と並行して協議されたが、公明は都構想推進に転じたため、取り下げた。

 こうした経緯を踏まえ、松井氏は「もうプランはできている」と、8総合区案を来年2月議会に提案する方針だ。市議会で第一党の維新は過半数の議席を持たないが、住民投票で共闘した公明の協力があれば可決に持ち込める。

 公明前向き、自共は反発

 14日に公明府本部代表に就任した石川博崇(ひろたか)参院議員は「市側から改めて総合区について提示されれば、積極的に議論に応じたい」と前向きな姿勢。ただ、党内の一部には「住民投票は行われないが、非常に責任は重い」と、他会派も含めた合意形成が必要との意見もある。

 市が以前まとめた案では、24区を人口30万人規模の8総合区に再編。市立保育所の運営や道路・公園の維持管理を市から総合区に移す。松井氏は「地域のニーズに応えてスピード感をもって物事を動かしていける」とするが、住民投票で都構想反対を掲げた各会派は、「ポスト都構想」ともいえる動きに慎重な姿勢だ。

 自民市議団の北野妙子幹事長は「都構想が否決されたばかりで、舌の根も乾かぬうちに(総合区案が)出されたことに非常に驚いた」とする。都構想と並行して議論された際は総合区に賛成しているが、「われわれが提案してきたのは24区の総合区案。合区を前提としたものではない」と強調。「これからどうするか、フラットで入る」と議論には応じるとしている。

 一方、「なぜ住民投票の結果の民意がこういう行為につながっていくのか、理解できない」と反発するのは共産市議団の山中智子団長。「新型コロナウイルス対策などに本腰を入れないといけないときに、また制度うんぬんというのはおかしい」と批判した。 

 消防や水道にハードル

 広域行政の一元化条例は松井氏と吉村氏が来年2月の府市両議会にそれぞれ提案し、制定することを目指している。都構想の制度設計で府に一元化するとされた港湾や水道、消防など約430の大阪市の事務をどう振り分けるかが焦点になる。

 府市の共同部署「副首都推進局」によると、一元化の手続きとしては、市から府への事務委託がある。地方自治法上、府市間で規約を結ぶ必要があり、財源の負担方法も定めるとみられる。府市両議会で議決されれば委託は可能だ。

 府市共同の協議会を副首都推進本部会議の下部組織として設置し、一元化する事務を協議する方法もある。副首都推進局の担当者は「2月議会までに約430の事務の分担を決めて、規約まで定めるのは難しい。分担方針を定めた条例案になるのではないか」とみる。

 消防と水道には具体的なハードルが想定される。消防組織法は「市町村の消防は条例に従い、市町村長が管理する」と規定しているため、副首都推進局は法改正の必要性などについて総務省と協議する方針だ。

 水道については、「府水道局」を新設するとした都構想の制度設計を参考に検討するとみられるが、自民市議は「水道は基礎自治体が担うべきだ。府でやるメリットはない」と批判する。府内全域の水道事業を「府水道局」が一体的に行うには、大阪市を除く府内42市町村でつくる「大阪広域水道企業団」などとの調整が必要になる。

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