海外情勢

「米中貿易衰退」覆る コンテナ船が驚異の躍進、記録的増収後押し

 長い間、コンテナ船事業は生き馬の目を抜く過酷なビジネスだった。利益率はごくわずかでリスクが高く、成長見通しは世界貿易の予測不可能な潮流に揺れていた。それが今や記録的水準の利益を上げ、新型コロナウイルス禍での大きなサプライズの一つとなっている。

 当面好調続く予想

 近年、専門家や政治家らは国際貿易の要である米中貿易が衰退の一途をたどるとの見方を声高に主張してきた。だが、ここ1年間で予想を覆す展開となった。3月にスエズ運河で座礁した船舶にコンテナがうずたかく積載されていた通り、各国による中国の輸出企業への需要はかつてない水準に高まり、特に米欧企業が以前よりも速いペースでコンテナを手配している。

 インターネット通販の利用拡大による旺盛な商品需要を背景に、顧客は高額な海上運賃の支払いにも応じる傾向にある。上海からロサンゼルスへの迅速な輸送に迫られ、米海運大手マトソンは昨年、大型船より運賃が高額な小型高速船による船便を週2便追加し、サービスを恒久化した。

 マトソンのマシュー・コックス最高経営責任者(CEO)はインタビューで「夜中の2時にお客から『何とかしてくれ、助けてくれ』という電話がかかってきた」と語る。

 マトソンの主要事業はハワイやグアムへの主食の海上輸送で、コンテナ船社の上位20社にも入っていないにも関わらず、昨年の株価は40%近く上昇。コンテナ船業界全体もかつてないほど業績が好調で、2020年に売上高が2000億ドル(約22兆円)を上回ったと見込まれている。デンマークのA.P.モラー・マースクや中国の中遠海運控股などのコンテナ海運大手は20年第4四半期の売上高が過去最高を記録したもようだ。

 米国の1兆9000億ドルの経済対策により、21年も追い風が続く可能性が高い。モラー・マースクのソレン・スコウCEOは3月、「経済対策の資金の一部が輸送を必要とする商品の購入に充てられることを視野に入れる必要がある」と話した。

 輸送速度アップ急務

 一方、コンテナ船事業の活発化により、世界の貿易システムの基盤がいかに脆弱(ぜいじゃく)かも露呈した。コンテナ船の船員は過労に陥り、数千ものコンテナが船外に落下する事故が相次いだほか、スエズ運河の座礁事故が広範な経済問題に発展する恐れもある。

 ただ、こうした厳しい情勢下でも海運会社はさまざまな要因に支えられている。各国政府は消費者に潤沢な資金を給付し、金融システムの流動性を維持。その結果、中国の工場や米国の消費者は昨年の新型コロナの打撃から急速に回復し、需給混乱を切り抜けた。

 コックス氏は「中国の“世界の工場”としての地位は揺るぎない。現実に対処しなければならない問題は残るものの、中国が非常に優れた供給網を構築している事実は否定できず、短期間で代替手段を見いだすのは非常に難しい」と指摘する。

 新型コロナ流行前の60年間で米国の家計支出はモノからサービスへの支出にシフトしてきた。だが、米マッキンゼー・アンド・カンパニーの試算によると、20年にはこれが逆転し、商品購入額が5230億ドル増加したという。マッキンゼーのミュンヘンオフィスのパートナーを務めるルートヴィヒ・ハウスマン氏は「貨物船と輸送資産の大部分が太平洋航路に吸い上げられている。今の中国は無敵だ」と指摘する。

 太平洋航路でのコンテナ輸送窮迫の影響は欧州にも波及している。荷主の国際物流の共同購買を行う独エクスタッフは2月、独自に船舶をチャーターし、アジアからの輸入手段を確保した。エクスタッフのボド・ノップ会長によると、中国発欧州向けの40フィートコンテナ1個あたりの運賃は1年前の約4倍に相当する8000ドル前後に上昇し、少なくとも6月中は5000ドル以上で推移する見込みだ。ノップ会長は「需要が供給をはるかに上回っている」と語る。

 電子商取引ブームは引き続きこうした流れを加速する。米貨物フォワーダー、フレックスポートの創業者兼CEOを務めるリャン・ピーターセン氏は「多くの人がボタンをクリックするだけで商品が届く便利さを初めて体感した。これには病みつきになる」と語った。

 ピーターセン氏は技術の進歩が輸送スピードや調達多様化などの向上に貢献するが、サプライチェーン(供給網)や製造拠点の「劇的な変化」は望めないとみる。(ブルームバーグ Brendan Murray)

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