5時から作家塾

古いが新しい、ヨーロッパを股にかける“令和のサブちゃん”「三五八屋」 (2/4ページ)

ステレンフェルト幸子

 激務の武田氏に突撃インタビュー

 武田氏はどのような経緯を経て、ヨーロッパ在住日本人の胃袋と心を支えるビジネスを始めたのか。睡眠時間を削ってまで「自分の手で玄関までお届け」にこだわる理由は何か。貴重な時間を頂いて話を伺った。

 --そもそもどうしてオランダに渡ったのですか?

 オランダに来てもう35年になるのですが、当初は3年の予定だったのです。

 日系の小口航空貨物会社のアムステルダム支店への就職でオランダにやって来て、日本の新聞や企業の書類の海外宅配の仕事をしていました。

 新入社員だった1年目の年末、日本でお世話になった方々にお礼にお歳暮を贈りたいと思ったのですが、そもそもオランダにはお歳暮の習慣もなければ、言葉もわからなかった自分には小包ひとつ発送するのも大変な仕事でした。会社のオランダ人に頼み込んで手伝ってもらう間、これは欧州に住む他の日本人も同じ苦労をしているだろうと思いました。

 そこで在蘭邦人を対象にお歳暮サービスをやりたいと提案したら当時の寛大な社長がgoサインを出してくれて。当時日本では1本4000円くらいしていたボジョレーワインを、船便を利用して1本1500円でお歳暮用に販売しました。

 まだインターネットもなく、FAXすら出始めだった時代だったので、当時まだ1500人くらいしかいなかった在蘭邦人相手に下手くそな手書きのチラシを配ったのですが、ふたを開けてみたら大型コンテナ一杯分の注文が入ったのです。今思えばこれが、現在までずっと続く食品通販の仕事の第一歩で、そこから欧州在住の日本人向けの食品とギフトの通販事業を本格的に始めました。

 --なるほど、それが現在の三五八屋ですね

 いえいえ、とんでもありません。三五八屋は54歳の時に5度目の転職として始めた事業で、今年で創業5年です。初めての食品通販事業はその後独立して、5年後には従業員ごと会社を買い取りたいとのオファーを受けて親会社に転職しましたが、更に5年後にはドイツの日系会社から転職のオファーを受けて、全欧州在住邦人の利用者数1万世帯以上を対象にした通販業務に携わりました。

 --ずっと食材通販エリートだったんですね!

 いえ、その8年後事業所閉鎖に伴いリストラになりました。

 --お、おお

 「リストラ親父」となり、何もすることのない毎日は本当に苦痛で、今後どうやって生きていこうかと人生の落後者の気分で過ごしていました。そんなある日曜日の夕方「サザエさん」を観ていたのですが、その中でサザエさんにお酒や食品を配達に来た「三河屋のサブちゃん」を観て「これだ!」と閃きました。

 これからの小売業は店舗は不要、むしろ玄関まで届ける宅配が、便利で喜ばれるはずとの勘が、それまでの経験から働いたのです。

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