5時から作家塾

古いが新しい、ヨーロッパを股にかける“令和のサブちゃん”「三五八屋」 (3/4ページ)

ステレンフェルト幸子

 また、自分が海外に暮らす日本人だからこそ海外在住日本人の不便・好みが一番理解できるという自負もありましたし、日本語・日本流のサービスとおもてなしの心が求められていることもあたりがつきました。そこで昔ながらの日本の三河屋さんのビジネスモデルを再現しようと思ったのが、「三五八屋」開業のきっかけです。

 アマゾンしかり今や世界的に通販が主流となりつつありますが、三河屋商法はその中でも宅配業者を通さずエリア限定というハンデはありながら、売り手と買い手が直接顔を合わせる人間味と信頼感が、一番の強みと考えています。

 --開業時、最も苦労したことはなんですか?

 苦労というのとは違うかもしれませんが、開業したのが54歳でしたから、絶対に失敗できないという思いが強くありました。それで会社のイメージに関わる社名・ロゴ・電話番号など全てにこだわり、その準備に1年以上かけました。

 例えば屋号の「三五八屋」は、「三河屋」「越後屋」など主人の出身地を付けていた江戸時代の商人にならい、山形県の郷土料理で一夜漬けの王様と呼ばれる「三五八漬」から頂き「三五八屋」に決めました。また開業を機にビジネスネームも「武田三五八」に統一し、生まれ変わったつもりで三五八屋の三五八に成りきって役者のごとく演じてみようと気合を入れました。ロゴのお辞儀福助も日本人の心を表現する縁起のいいものを選びました。

 --今まででビジネス上の最大の失敗はやはり「コンテナ一杯の日本の高級フルーツが、糖分が高すぎたために傷んでいるとみなされて税関を通らず水際廃棄事件」でしょうか

 その話は、長くなるのでまた今度にしましょう(笑)。失敗はたくさんあります。宅配のため配達車「358号」で走り回り始めた頃、スピード違反のチケットがひと月に何枚も来たり、50ユーロ分の食材をお届けするためお客様のお宅の前に車を止めていたら、駐車違反で90ユーロの罰金を科されたり、罰金だけでもいくら払ったことか。

 また失敗というより忘れられない体験ですが、ベルギー配達を始めて間もない頃、配達件数が多く、回りきれない日がありました。遅くなりそうなお客様には連絡を入れてその旨を伝え、日を改めて出直しさせて頂くことも可能ですと申しましたが、全てのお客様が「待っています」と。一番最後のお届けのお客様には、午前0時半頃になりそうですと連絡をしたら「起きて待っていますよ」と言ってくださり、お宅のドアを開けると苦情を言われるどころか「大変ですね!」とコーヒーを淹れて待っていてくださったのです。その日の帰宅は午前4時前だったかと思いますが、あの時の感謝は多分一生忘れないでしょう。

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