社会・その他

「ふるさと納税で困っています」 寄付への“お礼”が招いた49億円流出 (2/3ページ)

 同時に、自治体はふるさと納税を通して財源を確保できる。地方の企業も、返礼品の提供を通して自社の強みをアピールすることなどができる。それは、わが国の地方経済の活性化にとって重要だ。

 返礼品競争が激化

 ふるさと納税は、人々の自由な考えを活かして納税者の満足感と地方の活力向上の両立を目指そうとする制度だ。その発想は、これまでの地方財政制度とは大きく異なる。

 わが国では、地方交付税によって自治体間の財源の不均衡を解消することを目指してきた。この制度では、政府が集めた税金を、官僚組織が合理的と判断した基準にもとづいて、各自治体に再分配する。いくらの交付税を、どこに配るかは財務官僚の考えが影響する。

 一方、ふるさと納税では、一人ひとりの納税者(国民)から、直接、自治体に資金が回る。中央政府の所得再分配機能を経由することなく、個人の意思にもとづいて地方にダイレクトに財源が移るのが特徴だ。

 問題は、自治体が他よりも多くの寄付を集めようとして、過度な返礼品を提供するようになってしまったことだ。ふるさと納税制度は、地方貢献・応援という理念にもとづくアイデアの創出促進よりも、返礼品競争が激化してしまっていると指摘する経済の専門家もいる。一部では、地元の企業が取り扱っているからという理由で、他の都道府県の特産品やギフト券、家電などを返礼品として提供するケースもある。これは行き過ぎだろう。

 同時に、地方の応援よりも、返礼品を目当てにふるさと納税を行う人も増えている。この結果、一部の自治体では住民税収の落ち込みが軽視できない問題になってしまった。

 「ふるさと納税で困っています」

 神奈川県川崎市は市民向けのパンフレットに「ふるさと納税で困っています」と題したコラムを掲載した。それによると、同市では他の自治体にふるさと納税を行う市民が増加し、市税が49億円も流出してしまった。これは、ふるさと納税の負の側面といってもよいだろう。

 本来、返礼品を提供することの根本的な目的は、寄付への“お礼”だったはずだ。それに加え、農産・海産物などの提供による地域の魅力発信や、体験型観光需要の創出などを通した話題作りなどのためにも、返礼品を提供する意義はある。

 これに対して、他地域の産品や家電、ギフト券などを返礼品にして寄付を集めようとする発想は、本来の枠組みから逸脱してしまっているといわざるを得ない。なお、わが国の地方財政法では「地方公共団体は、(中略)他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行つてはならない」と定めている。

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