M&Aで「負ののれん」を蓄える ライザップ「利益かさ上げ」の全カラクリ (2/3ページ)

繰り返したM&Aの代償

 では、何がライザップの営業利益をかさ上げしているのだろうか。それは「負ののれん」である。「のれん」とは会計用語で、「正ののれん」と「負ののれん」の2種類がある。一般的には正ののれんになることがほとんどなので、単に「のれん」と言えば正ののれんのことを指す。

 のれんと聞くと、まずお店の軒先にかかっている布製の暖簾(のれん)のことが頭に思い浮かぶと思うが、会計上ののれんの語源もここから来ている。のれんの意味は、ブランド、技術、販売網、従業員の能力などの企業が保有する目に見えない価値の総称のことである。このような無形の価値は、BSには載らない資産で、M&Aによって初めて顕在化する資産だ。

 つまり、買収金額が、買収する会社(被買収会社)の純資産(IFRSでは資本と表記)の金額を超過した分が、のれんとして認識される(図表6参照)。なぜ純資産より高い金額で買収するかというと、被買収会社には潜在的な価値(のれん)があると思うから、買収会社は高いお金を出してでも買う。額面に上乗せした金額それこそが、目に見えないブランド価値などの「のれん」に相当する、というのが会計上の考え方だ。

「のれん」による営業利益のかさ上げ

 M&Aの際には、シナジー効果を前提に潜在的な成長力を見越して企業買収するのが通常である。そのため、買収金額が純資産を上回ることが多い。この結果生じたのれんが「正ののれん」で、逆に、買収金額が純資産を下回った結果生じたのれんが「負ののれん」となる。

 ・「純資産<買収金額」→正ののれん

 ・「純資産>買収金額」→負ののれん

 負ののれんは、割安で買うことで生まれた差額は“儲け”と同様なので、日本基準では特別利益に計上するルールになっている。IFRSにおいても考え方は同様だが、前述のとおりIFRSには特別利益という区分がない。そのため、負ののれんは営業利益に加算される。ライザップは割安での企業買収を繰り返してきたため、負ののれんが多額に計上され、結果的に営業利益がかさ上げされていたのである。

割安にはそれなりの理由がある

 純資産よりも小さい金額で買収できるというのは、通常の状況下では想定されにくい。

 もしも、街中で定価100万円の時計が60万円と割安で売られていれば「なぜ?」と疑問に思うだろう。傷が付いている、動作が不安定、商品に欠陥がある……割安で売るからには何らかの理由があるのだと想定される。企業買収で生じる負ののれんも、実はこれと同じロジックだ。帳簿価額100億円の会社が60億円と割安で売られていれば、赤字を垂れ流しているなどその会社の具合があまりよろしくなく、今後マイナス成長が予想されるからである。

 言い換えれば、ライザップが負ののれんを計上し続けているということは、欠陥商品(企業)を買い続けているようなものである。

 確かに負ののれんが計上されれば、買収時点で営業利益はかさ上げされる。そして買収した企業を見事に再生できれば、グループ全体の価値が向上し、一挙両得だ。しかし、すべての買収がそのようなシナリオで進むわけがない。再生できなければ、減損損失を計上しなければならない。減損損失は、日本基準でいうところの特別損失だが、IFRSには特別損失という区分がないため営業利益に加減算され、営業利益を押し下げる結果となる。

 ライザップの営業利益は、ベストシナリオで進んでいる間は実態より大きく膨らんで見えるが、ワーストシナリオに入った途端、実態よりも営業利益が削り取られてしまう。負ののれんは、いわば「諸刃の剣」なのである。

「利益は意見、キャッシュは事実」