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EV競争で日本脱落リスク GM・フォードは全車種視野

 世界各国の政府が脱炭素化にかじを切るなか、自動車メーカーの電動化をめぐる競争が激化している。特に電気自動車(EV)は欧米や中国勢が注力するほか、アップルなど異業種の参入の動きも出てくるなど、電動車の主役として期待が急上昇している。ハイブリッド車(HV)を中期的に電動車の中心に据える日本勢はEVでは後れをとっており、このままでは競争から脱落するリスクも懸念される。

 トヨタ全方位戦略

 トヨタ自動車は2月10日、2025年までに米新車販売の4割を電動化する目標を示した。年内にEV2車種とプラグインハイブリッド車(PHV)1車種を発表する計画だ。

 「25年近く前に(HVの)プリウスを世界に先駆けて投入した。私たちは、引き続き電動化のリーダーであり続ける」。トヨタ北米法人のカーター上級副社長は声明でこう述べた。

 米国での電動化目標を示し、車種を拡充させた背景には、脱炭素社会への転換を掲げるバイデン政権の発足がある。

 トヨタは、国・地域のエネルギー事情などに応じた全方位型の電動化戦略を採用。25年までに世界で販売する新車の550万台以上を電動車にする計画だ。内訳は450万台以上がHV。残りの100万台以上はEVと、水素で走る燃料電池車(FCV)だ。

 EVは20年代前半に10車種以上をそろえる計画だが、米ゼネラル・モーターズ(GM)は25年までに30車種のEVを投入する方針だ。35年までには新車を全面的に電動化させ、HVも造らないなど二酸化炭素(CO2)排出削減を徹底する。

 独フォルクスワーゲン(VW)は新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受け、20年は世界販売台数の首位の座をトヨタに奪われたものの、EV販売は前年の3.1倍の23万1600台に増えた。VWのお膝元・欧州では環境規制強化を背景にEV普及が進む。17日には、米フォード・モーターが欧州で展開する乗用車を30年までに全てEVにすると発表した。

 異業種参入の動き

 世界のEV市場は補助金制度などを追い風に急成長し、35年にHVの約3倍になるとの試算もある。しかし、日本自動車工業会の会長も務めるトヨタの豊田章男社長は昨年12月の記者会見で、急速なEV普及が日本にもたらす弊害を訴えた。CO2を大量に排出する火力発電が全発電量の電源の7割超を占める状況を念頭に「EVを造るほどCO2が増える」と指摘。「日本が全てEVになると、夏場のピーク時に電力不足になる」との懸念も示した。

 ただ、走行時にCO2を排出するHVは「EVが電動車の主役となるまでのつなぎ役」(自動車業界関係者)との見方も根強い。HVの扱いも世界各国・地域で異なり、英国や米カリフォルニア州は35年までにHVを含むガソリン、ディーゼル車の販売を禁止するのに対し、中国は35年時点で新車販売の50%はHVにしたい考えだ。

 欧米勢がEVにシフトする中、日本勢がHVに固執することもリスクで、昨年からはホンダやマツダも相次いでEVを投入。トヨタも2人乗り超小型EV「シーポッド」を発売した。

 一方で、EVには異業種参入の動きもある。ガソリン車と比べて部品が少なく、新規参入のハードルは高くないとされる。米アップルは開発に専念し、製造は自動車メーカーに委託する水平分業のビジネスモデルでEV参入を画策する。既存メーカーは開発から生産、販売まで手掛け、部品を供給するサプライヤーに支えられた垂直統合のビジネスモデルで優位性を保ってきた。アップルが参入すれば「下請け」に回る事態もあり得る。

 日本勢は三菱自動車が09年に世界初の量産EV「アイミーブ」を発売するなど、かつてはEVでも世界をリードしたが、ガソリン車と比べ割高な価格や充電インフラの不足などが普及の妨げとなっている。世界の潮流から取り残されないよう、インフラ整備も含めた官民の覚悟が問われそうだ。(宇野貴文)

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