マネジメント新時代

「OTA」で自動車はどこで差別化するのか

 2021年に入り、突然、多くの自動車メーカーが、自動車のソフトウエアを無線を介して更新するシステム「オーバー・ジ・エアー(OTA)」の採用を宣言するようになった。まるでOTA元年である。携帯電話やパソコンには、更新の自動更新機能があるが、これまで自動車には、米電気自動車(EV)大手テスラを除いて、ナビゲーション機能などの更新にしか採用されてこなかった。ではなぜここにきてOTAを採用する動きが増えてきたのであろうか。(日本電動化研究所 代表取締役・和田憲一郎)

 2つの引き金

 最初に自動車でOTAを採用したのはテスラである。12年発売のモデルSで初めて自動運転のためのOTAを採用した。しかし、他社は追随しなかった。理由として、OTAを採用すれば、ユーザー自らが自動更新を行えるようになり、販売店の仕事を奪う可能性があることや、セキュリティーへの懸念などからである。

 しかし、今年になってOTA採用の動きが増えてきたのは主に2つの理由があるのではと考える。1つは、昨年9月、米加州のニューサム知事が35年までに州内で販売する新車を「ゼロエミッション車」にすると発表した。これを機に一気にEV化への動きが早まり、日米欧中に於いてもEV化促進の動きが表面化した。

 もともと、多くの自動車メーカーは、OTA採用を考えていたと思われる。しかし、これまでのガソリン車では、電子制御ユニット(ECU)が60~80個ともいわれ、機能部品ごとに分散しており、集中制御しにくかった。しかし、EVの場合、コンポーネントごとにまとまっており、制御しやすいことが挙げられる。テスラモデル3では、汎用ECU3個、自動運転用1個と、4つのECUに統合されている。このため、ゼロエミッション化への大転換を図る際に、分散型ECUから統合型ECUに切り替え、合わせてOTAを採用しようとしたのではないだろうか。

 もう一つの理由は、自動運転の世界が間近に迫ってきたことであろう。各地で実証試験を行っている間は、自動車メーカーの技術者がソフトを更新すればよかった。しかし、実用化となれば、自動運転技術の進化のペースは速いため、販売店での更新では追いつかない。中国では河北省雄安新区で22~23年に自動運転車しか走行できなくなるなど、自動運転の急速な普及が予想されており、準備を急いだのではないだろうか。

 他社との差別化

 OTA装備が当たり前となると、自動車メーカーはどのようなところで差別化するのであろうか。いうまでもなく、OTAは自動運転機能だけでなく、ECUバグ、ナビ最新化、セキュリティー強化などがメインとなる。しかし、差別化しようにも、携帯やパソコンなどでは、更新内容に差異はない。

 ところが、既に8年前からOTAを採用しているテスラは、違う価値もみいだしたようだ。たとえば、ユーザーから「クリスマスシーズンになると、サンタに関連するモードがあるといいな」との声を受けて、新しいソフトを開発し、ユーザーの同意があれば、更新できるようにした。「サンタモード」である。

 これを選択すると、クリスマスソングとともに、メーター中央にソリに乗ったサンタと引っ張るトナカイが現れる。またウィンカーを押すと、「シャンシャン!」とトナカイが引く鈴の音が鳴り、クリスマスの雰囲気を醸し出す。テスラでは、サンタモード以外にもいろいろなモードがあるとのこと。

 日本であれば、悪乗りだとの一声で片づけてしまいそうであるが、自動運転機能のみならず、ドライバーや同乗する子供の関心を高め、テスラのファン拡大に寄与しているように思える。

 このように、OTAは考えれば考えるほど、自動運転や機能の更新以外に大きな可能性を秘めているのではないだろうか。今後、どのようなアイデアを活用するのか、自動車メーカー、自動車部品メーカーなども柔軟な発想が求められるのであろう。また、それを受け入れる度量も必要となってくるのではないだろうか。

【プロフィル】和田憲一郎 わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャーなどを歴任。13年3月退社。その後、15年6月に日本電動化研究所を設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。福井県出身。

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