マネジメント新時代

バッテリー交換式EVトラックの将来性は

 意外なことに、中国でバッテリー交換式の電気自動車(EV)のトラックがかなり健闘しているようだ。バッテリー交換式EVトラックといえば、これまでは、トラックの荷台下に大型のバッテリーパックを搭載し、バッテリーパックをフォークリフトで交換するものであった。しかし、今回採用が進んでいるものは、トラックの運転席背面に長方形の大型バッテリーパック(幅約2.5メートル、高さ約2メートル、奥行き約1メートル)を搭載するものである。(日本電動化研究所代表取締役・和田憲一郎)

 ベタープレイスの蹉跌

 筆者がバッテリー交換システムと聞いて思い出すのは、米ベンチャー、ベタープレイス(2013年に清算)が10年頃に東京・虎ノ門にバッテリー交換ステーションを設置し、EVタクシーによる実証試験を開始したことである。その後、いろいろ活動されていたようであるが、結局実用化には至らなかった。主な理由としては、対象としたのが乗用車であり、乗用車の場合、車体レイアウトによりバッテリーパックのサイズが、車種ごとに異なってしまい、なかなか標準化できなかった。また当時はバッテリーが著しく進化していた時期であり、同じバッテリー容量でも2~3年経つと、サイズが3分の2になるなど、バッテリーの進化に対して対応が難しかったことが挙げられる。交換したバッテリーの信頼性などについても、誰が責任を負うのかなど、不透明な点が多かった。虎ノ門のバッテリー交換ステーションを見た時も、かなり大がかりで複雑であり、設置費用も当時5000万円以上といわれていたことを思い出す。このような点から、アイデアとして理解できるものの、実用化には難しかったのではないだろうか。

 今回採用が進んでいる方式は、過去の課題を考えた形跡があり、トラック運転席背面に長方形の大型バッテリーパックを搭載するものである。大手電池メーカーである寧徳時代新能源科技(CATL)が主導した構造であり、バッテリーパック容量は最大350キロワット時、走行距離約200キロ程度とのこと。バッテリー交換は、バッテリー交換ステーションで搭載されていたバッテリーパックを上から吊り下げて取り除き、次に新しいバッテリーパックを乗せ換えるというシンプルな方式である。交換時間は5分程度のようだ。

 港湾作業などに需要

 バッテリー交換式EVトラックが生まれたのには、(1)EVトラックとして採用するには、バッテリーコストが高く、従ってEVトラックそのものの価格が高くなり、従来車に比べて購入しにくくなる(2)大型バッテリー搭載のため、急速充電をするにしても、充電時間が長く、利便性が悪い。また充電した割には走行距離が短い(3)バッテリーの信頼性や、使用後のリサイクル、リユースなどのエコシステムが完備されていない-といった理由があったようだ。

 このため、バッテリー交換式EVトラックの場合、車体とバッテリー価格を分離することで、車体は大幅に安くなり、かつバッテリーのレンタル費用は月間1000元(約1万7000円)となるとのこと。これならトラック事業者も購入しやすい。既にトラックメーカーの漢馬科技(旧・華菱星馬汽車)など採用実績は数千台に達しているようだ。またCATLはバッテリーパックの標準化を目指しているとのこと。

 筆者が推測するに、港湾作業や鉱山での作業などルートが決まった運搬に対しては、適切な場所にバッテリー交換ステーションを設置することで、一定の需要を満たすように思われる。日本でもバッテリーパックが標準化されれば同様であろう。

 おりしも、日中共同開発で最大出力900キロワットの超急速充電規格「ChaoJi(チャオジ)」が開発中である。実用化は22年~23年といわれており、これまで充電時間が長いといわれてきた弱点を一気に克服することが予想される。EVトラックは将来、バッテリー交換EVトラックとチャオジに対応したEVトラックに二分するのではないだろうか。

【プロフィル】和田憲一郎 わだ・けんいちろう 新潟大工卒。1989年三菱自動車入社。主に内装設計を担当し、2005年に新世代電気自動車「i-MiEV(アイ・ミーブ)」プロジェクトマネージャーなどを歴任。13年3月退社。その後、15年6月に日本電動化研究所を設立し、現職。著書に『成功する新商品開発プロジェクトのすすめ方』(同文舘出版)がある。63歳。福井県出身。

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