金融

ワクチン遅れ、消費回復に影

 2020年度の消費支出は過去2番目の下げ幅となり、繰り返される新型コロナウイルスの緊急事態宣言が消費に与えた影響が改めて浮き彫りになった。足元では3回目の宣言発令で持ち直しかけた景気が再び低迷するのは避けられず、ワクチン接種の遅れが消費回復に影を落とす。世の中に出回る現預金は過去最大に膨らんでいるにもかかわらず、先行きの不透明感が財布のヒモを固くしている。

 3月の家計調査(2人以上世帯)は1世帯当たりの消費支出が物価変動を除く実質で前年同月比6.2%増と4カ月ぶりに増加。年明け以降の2回目の宣言は飲食などに打撃が限定された上、コロナに慣れた人々は昨春ほど経済活動を抑制しなくなり、消費は2月から持ち直しに転じていた。

 だが、4月からの3回目の宣言で百貨店など大型店も営業自粛を強いられ、景気は急失速した。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「感染『第4波』はまだ拡大傾向だ。6月以降も各種自粛が続けば4~6月期の実質消費は2四半期連続で減少する可能性がある」と指摘する。

 宣言発令が相次ぐ一因と指摘されるのが「ワクチン格差」だ。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストによると、今月10日時点の100人当たりの接種回数は経済正常化が進む英国が77.19回、米国が76.95回なのに比べ、日本は3.32回にとどまる。「ワクチン接種の遅れで宣言は4回、5回目と続き、年内に限界を迎え破綻する企業が外食・宿泊、交通など個人向けサービス業で相次ぐ」(熊野氏)と懸念される。

 日本銀行によると、主に家計と企業(金融機関除く)が保有する現預金は3月時点で前年同月比8.0%増の1490兆円と過去最高だった。10万円の特別定額給付金に加え、家計の支出抑制や企業が手元資金を手厚くしたことが影響した。滞留したお金を消費に回さなければ低迷するサービス業を支えられない。熊野氏はコロナが当分は収束しない前提に立ち、接種が済んだ人から飲食店や観光施設を利用できる「ワクチン・パスポート」発行など政策の再検討が必要と訴える。(田辺裕晶)

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