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原発2基分の潜在性 「潮流発電」を再生エネの一翼に、長崎・五島で実証実験

 春の暖かな陽光が波間できらきらと照り返す。エメラルドグリーンの海は底まで見通せるほど透き通っている。長崎県五島市・奈留島沖の海域「奈留瀬戸」。穏やかな海面とは裏腹に海中の潮流は速い。これを利用する「潮流発電」の実証実験が始まった。天候に左右される風力や太陽光と比べ、潮の干満によって生じる潮流は安定性が高く、発電量は満ち引きに連動する。日本が政策を総動員して目指す「脱炭素」に向けた貴重な再生可能エネルギーになり得るとの期待が高まっている。

 水深40メートルの海底設置

 1月末に、奈留島の南西部、鈴ノ浦の沖合約500メートル、深さ約40メートルの海底に設置された発電機は巨大なスクリューのようだ。高さ約23メートル、重量約1000トン、中心部に備え付けられた3枚のブレードの長さは約7メートル、出力は500キロワット。一般家庭約300世帯の消費電力を賄える規模だ。

 奈留瀬戸は奈留島と西隣の久賀島に囲まれた海域で幅が約1.3キロメートルと狭い。通常、潮流発電には毎秒1メートル以上の流速が必要だが、ここでは約3メートルを超す。

 実証実験は環境省の公募事業で、九州電力の子会社で再生可能エネルギー事業を展開している九電みらいエナジーが落札し実施している。今回、利用している発電機は、奈留瀬戸の状況に適応したものを英国の潮流発電企業から調達した。

 日本の気象や海洋に対応した潮流発電の実用化のためのデータ収集・分析が目的で、発電量、ブレードの回転数、カメラ画像などを日々監視している。海底に約2キロにわたり直径約20センチの専用ケーブルをはわせて、発電機と鈴ノ浦の地上施設を結び、データを受信する。

 データは地上設備のほか、福岡市の九電みらいエネジー本社、発電機を提供した英国企業のブリストルのオフィスでも見ることができる。通常、地上施設は無人で、福岡本社と英国企業でチェックしている。福岡本社の担当者はデータの解析や状況の分析について英国の担当者とオンライン会議を開き、意見交換しているという。

 1月末から始まった実験はこれまでのところ順調に推移、システムの一部修正はあったものの、計画通りにデータを収集できている。

 発電量と干満差の関係を分析したところ、ぴったりと連動していることが判明した。風速との関係についても調べたが、干満差ほどの連動性はなかった。海上の風が弱いときでも、海中では潮流が発生し、安定した発電に有効な実態がデータで裏付けられた。

 海の底に大きな発電機を沈めた実験だけに、地元の漁業者らへの対応は不可欠だった。

 事業内容の説明のほか、漁獲量調査などにも取り組んだ。奈留町漁業協同組合の大久保金政組合長は「実験海域は潮が速く、漁場や漁船の航路にはかからない。電気代が安くなるのなら協力したい」と前向きだ。

 九電みらいエナジーでこの事業を統括する寺崎正勝常務が2015年に英国の潮流発電を視察したことが、今回の実験の出発点になった。

 原発2基分の潜在性

 英最北部に位置するオークニー諸島とスコットランドの間にあるペントランド海峡での発電は16年に始まった。採算の取れるビジネスとして金融機関が融資し、発電機の増設に乗り出している。離島が多い日本に適しており、地産地消すれば効率性と脱炭素が両立できると確信し16年度から取り組んできた。日本近海には潮流の速い海域が多くあり、その潜在性は約2ギガワット、原子力発電所2基分に相当するとの試算もある。

 実験は21年度に終了の予定だが、同社は継続を環境省に働きかけている。寺崎常務は「潮流は島国にとって、身近だが未使用のエネルギー。ベース電源にはならないが、効率的に利用できれば国内の脱炭素にもつながる」と指摘。さらに「インフラ輸出の柱としてフィリピンやインドネシアなどアジアの島国に輸出できる」と、将来構想を語った。

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