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「実はコロナ前から低空飛行」菅政権に頼るしかないJTBと近ツーの崖っぷち (1/2ページ)

 ■ワクチン接種が進んでも、売上はコロナ前の半分か

 コロナ禍で旅行業界の先行きが危ぶまれている。最大手のJTBが5月に発表した2021年3月期連結決算は、最終利益が過去最悪となる1051億円の赤字に沈んだ。巨額赤字の計上に伴い、3月末時点の自己資本比率は6.9%となり、昨年3月末時点の24.3%から急落、債務超過の危機が迫る。

 同じ旅行大手の近畿日本ツーリストやクラブツーリズムを擁するKNT-CTホールディングスはもっと深刻だ。同じく5月に発表した21年3月期の連結最終損益は284億5600万円の赤字で、96億5400万円の債務超過となった。

 債務超過は二期連続となる。このままだと、上場廃止となる。上場廃止を回避するため、主要取引銀行である三菱UFJ銀行と三井住友銀行が資金を貸し付ける合同会社2社、そして親会社である近鉄グループホールディングスに対し、議決権のない社債型優先株を割り当てて400億円を6月末までに調達。上場廃止を回避する考えだ。

 とはいえ、外部環境の厳しさは変わらない。2022年3月期は売上高1800億円、営業損益は140億円の赤字を見込んでいる。ワクチン接種が本格的に進み、Go Toトラベルの再開も回復を後押しするが、国内旅行は2019年3月期の50%程度にとどまるとみられている。

 ■23億400万円あった資本金を1億円に減資

 JTBは新卒採用の見送りや退職による自然減で、22年3月期には20年3月期と比べ国内外で約7200人の従業員削減を進めるほか、社員の平均年収を約3割減らす。さらに国内店舗もすでに73店を閉鎖するなどコスト削減を進めているが、売り上げの落ち込みにリストラが追い付かない。

 ワクチン接種の拡大によるコロナの収束に期待するしかない中で、JTBも躍起だ。その象徴が資本金1億円への「減資」だ。23億400万円あった資本金を1億円に減資すると2月に発表した。

 この減資の目的は中小企業だけが受けることのできる複数の税制上の優遇、つまり「税逃れ」を狙ったものではないかという指摘がある。もっとも大きいメリットは、外形標準課税の免除だ。法人事業税の一つで、人件費などを基準に算出される。給与などの人件費は1.2%が企業に対して課税される。資本金1億円を超える大企業のみが対象で、中小企業には課されない。

 グループで2万7000人を超える従業員を抱えるJTBの人件費は1000億円を超えるとみられる。それを基に試算すると、中小企業化によって、JTBは約12億円分の税金の支払いを回避できる。JTBの売上高は1兆円を超えるが、店舗の賃料などの営業コストが高いため収益率は低く、直近で黒字だった20年3月期の税引前純利益はわずか16億円にすぎない。12億円の税金免除でもその恩恵は大きい。

 ■シャープの失敗で、「1億円減資」は禁じ手だったが…

 業界内でもっとも受注額の多いJTBは社員の給与水準も高い。また、業界トップとして、GoToキャンペーンでも主導権を握り、その恩恵を受けている。「コロナで存亡の危機にある」からといって、中小企業と同じように税制上の優遇措置の恩恵にあやかるのはどうかという声は経済界で少なくない。

 かつて、この減資による“税金逃れ”で世間の批判が高まったことがあった。シャープの事案だ。2015年当時、韓国勢などとの液晶テレビなどの競争激化でグループ全体の前期最終赤字が2223億円に膨らみ、破綻の危機に直面した。その際、状況を打開すべく画策したのが減資だった。1218億円の資本金を1億円に減らし、中小企業化による節税を狙ったのだ。

 この動きに対し、経済界から批判が続出。宮澤洋一経済産業相(当時)も「企業再生としては違和感がある」と批判。結局、減資は5億円までに留まり、節税による業績底上げ策は失敗した。

 その後、税制の優遇にありつこうとする大企業の中小企業化は、「禁じ手」として忌避されてきたが、JTBは、コロナ禍を口実に、そのタブーを破ってしまった。

 ■旅行業界は「二階-菅ライン」にすがるしかない

 さらにJTBは日本政策投資銀行への資金支援も要請している。同行の「危機対応融資」に加えて新たに設けられた500億円のファンドから「優先株」の出資を受けられる仕組みを活用しようというのだ。前年の3倍の2.8兆円に増額された「危機対応融資」も繰り出して、まさに飲食・宿泊・旅行業の「駆け込み寺」と化した政投銀にすがるなど、使える手はいくらでも使おうとしている。

 今や風前の灯火であるJTBやKNT-CTホールディングスなど旅行業界がすがるのは「観光業界に影響力を持つ自民党と政府の二階-菅ラインしかなくなった」(JTB幹部)とされる。

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