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「コロナ禍だからゴメン」とリストラする経営者にSDGsバッジをつける資格はない (2/3ページ)

 トヨタ自動車元会長奥田碩氏「経営者よ、クビ切りするなら切腹せよ」

 ところが責任を感じて辞任する経営者は少なくなり、社員をリストラすることで責任回避しようという経営者が現れ始めた。

 それに警鐘を鳴らしたのが、トヨタ自動車会長の奥田碩経団連会長(当時)だった。『文藝春秋』の1999年10月号で「経営者よ、クビ切りするなら切腹せよ」という論文を発表。その中で、奥田氏はこう書いている。

 「人が余って仕方がないほど仕事が少なくなり、会社を小さくしたのは誰ですか、といえばこれはすべて経営者の責任です」

 「仮に現在、人が余っているというのなら、その人材を使って新しいビジネスに生かす努力をしてこそ経営者というものです。それもできないようでは、経営者の名に値しません」

 構造改革もしないで事業縮小を余儀なくされ、その結果、人員削減に踏み切るのは経営者失格というのは、奥田氏だけではなく、旧来の経営者が持ち合わせていた経営哲学であり倫理観だった。

 構造改革をやらずにさっさと人員削減に踏み切る経営者の言い分

 だが、その後、構造改革などやるべきことをやらずに人員削減に踏み切る経営者が増えていく。なぜ業績が悪化する前に構造改革をしなかったのか。2000年代に大規模リストラを実施した従業員5万人超の大手メーカーの元人事担当役員は後にこう述懐している。

 「市場競争に敗れて赤字になることを会社としてなぜ止められなかったのかという思いがある。本来は経営が安定している時に構造改革をするべきだろうが、先が見えている経営者はそんなにいなかった。逆に先を見越して改革しようとすれば反発を招く。周囲の信頼や人望のある経営者であれば支持するかもしれないが、反発を恐れて改革に躊躇する経営者も多かった。結局、手を打たないままに業績が悪化し、リストラにつながった」

 経営者の資質に欠け、さらに覚悟が不足していたことが“失われた20年”を招き、人員削減で延命を図る企業が増えたのだろう。

 もちろん今でも長期雇用を重視している企業もある。その多くは「人を基軸」とする経営を掲げ、危機的状況に陥っても雇用を守ることを最優先する企業である。

 今の大企業の考え方「雇用を守る」派vs「株主価値の増大重視」派

 前出の元人事担当役員は今の大手企業の考え方は以下の2つに分かれていると指摘する。

 (1) 雇用を守ることを前提に企業の成長を目指して改革を推進する企業

 (2) 株主価値の増大など企業活力を重視した成長を目指して改革を推進する企業

 この目的によって改革の中身は違ってくる。

 当然、(2)の企業は人員削減も改革の重要な柱となる。(1)と(2)の企業を見分けるのは難しいかもしれないが、少なくとも2000年以降、2回以上のリストラを実施している企業は(2)のタイプと見て間違いないだろう。

 しかし(1)の企業であっても雇用を守ろうとして改革を徐々に進めてきたが、最後は間に合わなくなってリストラに至った企業もある。

 社員を路頭に迷わせない「不幸を生まないリストラ」5カ条

 それでは今後何らかのリストラが避けられない場合、会社や経営者がやるべき「不幸を生まないリストラ」の方法もある。以下の5つだ。

 (1) 年功的賃金や年功的昇格・昇進制度からの脱却

 (2) 厳格な人事評価制度の確立と運用による緊張感と意欲の醸成

 (3) 自社以外でも通用する知識・スキルの修得と「キャリア自立」などの意識改革の推進

 (4) 職種・キャリア転換教育と常設の早期退職優遇制度(独立・転職支援制度)の制度化

 (5) 「雇用シェア」を活用した在籍出向・転籍出向を促す

 なぜ日本のリストラでは中高年社員がターゲットになるのか。希望退職者募集の対象者はほとんどが45歳ないし40歳以上となっているが、理由の一つは給与が高いからである。

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