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人当たりの良さで採用と出世が決まる? ワークマンには“凡人しかいない”は本当なのか (3/3ページ)

 ■“100年先”という超長期目標

 分からなくはないのだが、ひとつ思うのは、目標の質についてである。上司と部下が心をひとつにして向かっていける目標とは、いったいいかなるものなのか。

 もう1点は、上司と部下の関係の核には何があるのか、という問題だ。数字やノルマで部下を縛ることなしに部下を動かそうとする場合、いったい何が必要なのか。鈴木さんが言う。

 「ワークマンは100年先を見据えている(100年の競争優位の確立を標榜している)会社なので、1年や2年数字が行かないからといって、だからなんだ? ということだと思います」

 超長期の目標を言揚げすることによって、目先の目標をクリアせねばならないというストレスから社員を解放しつつ、数値目標のクリア自体ではなくクリアするための方法に目を向けさせる。その方が、仕事の質を高め、会社の体質を長期的に強化することに繋がる、と解釈すればいいだろうか。

 ■人当たりのいい集団がハイスペック人材を凌ぐ

 では、上司と部下の関係はどうだろうか。吉田さんが言う。

 「上司と部下の関係の核にあるのは、相手に対する尊敬だと思います。部下とはいえ、自分とは違う人間ですから、必ずどこかに自分より優れたものを持っているはずです。日常的によく会話をしていれば、必ずそうしたものが見つかるので、私自身、そうした部分を尊敬もするし頼りにもしています。

 ワークマンはハイスペック人材のいない、凡庸な人間の集団です。だからこそ足りないところを互いに補い合いながら目標を達成していくわけで、その基礎になるのは、社員同士が競争する雰囲気がないことと、お互いを尊敬し合っていることだと思います」

 いささかきれいごとに過ぎる気はするが、「部下を尊敬する」というパワハラと正反対の言葉は、決して凡庸な人間からは出てこない気がする。

 しかし一方で、社員同士に競争する雰囲気がなく、数字を上げることにガツガツもしないとなると、いったいどういう人が出世するのかという疑問も湧いてくる。鈴木さんが言う。

 「やはり人当たり、でしょうか。採用も昇進もそこが基準の1つになっています」

 ワークマンでは「人当たりのいい人」を採用し、人当たりのいい人が出世する。これもあながちきれいごとではなく、人当たりのいい人の集団は、時にハイスペック人材を凌ぐ力を発揮するのかもしれない。10期連続最高益更新中という実績が、それを証明していると言ってもいいだろう。

 ■何を言っても否定されない安心感

 「上司(吉田さん)には、何を言っても否定されないという安心感があるので、自分の頭で考える機会が増えていると思います」(稲富さん)

 「私自身、これまで上司から自分の提案をないがしろにされた経験はありませんね。自分の提案がワークマンプラスや#ワークマン女子といった新しい業態に反映されていくことがむちゃくちゃ楽しくて、それが、仕事のやりがいの根幹になっています」(吉田さん)

 まだ漠然とはしているが、ワークマンが時間的に社員を追い込まないことによって、社員をさまざまなストレスから解放していること、そして、社員同士が競い合うのではなく、尊重し合い補い合うことによって集団として高いパフォーマンスを発揮しているということも見えてきた。

 しかし、なぜワークマンにそのようなことが可能なのか、そして、ワークマン方式は他の業種、業態でも可能なのかという疑問が残る。

 後編では、2012年に三井物産からワークマンに移籍してワークマンの「しない経営」を一躍有名にした土屋哲雄専務に、この点を伺うことにしよう。 (ノンフィクションライター 山田 清機)

 山田 清機(やまだ・せいき)

 ノンフィクションライター

 1963年、富山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、鉄鋼メーカー、出版社勤務を経て独立。著書に『東京タクシードライバー』 (朝日文庫)、『東京湾岸畸人伝』『寿町のひとびと』(ともに朝日新聞出版)などがある。

(PRESIDENT Online)

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