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土石流災害、「避難指示」発令時期の難しさ 一本化が避難遅れ招く

 今月起きた熱海の土石流災害では、熱海市が「避難指示」を出さなかったことが住民の避難の遅れを招き、被害拡大を招いたとの指摘が出ている。政府は5月、効果的な避難を呼びかけるため「レベル4」に相当していた「避難勧告」と「避難指示」を、「避難指示」に一本化したばかりだが、専門家は「逆に心理的な抵抗につながった可能性がある」と指摘する。

 市は被災前日の2日、レベル3に当たる「高齢者等避難」を発表した。その後、3日午前10時半に土石流が発生し、レベル4の避難指示は発令されないまま、一気にレベル5の「緊急安全確保」に引き上げられた。

 避難指示は、気象庁が発表する土砂災害警戒情報などを基に、市区町村の判断で出される。同情報は2日昼に出され、気象庁はその後もレベル4相当の危険があると情報提供を続けたが、市は避難指示を出さなかった。斉藤栄市長は4日の記者会見で、「限られた情報の中で最終的に私が判断した」と釈明。避難勧告の廃止が影響したか問われ「全くないことはない。避難勧告も避難指示も重いが、指示は特に重い」と述べた。

 県の担当者は「国の指針では、土砂災害警戒情報が出ればただちに避難指示が基本」と説明する。ただ、同情報は熱海市周辺に広く発表されていたものの、3日午前時点で避難指示を出していたのは、熱海市に隣接する4自治体の中では同県伊東市と神奈川県湯河原町だけだったという。

 被災地で調査を行った山口大学の山本晴彦教授(環境防災学)は避難指示を出した場合、避難呼びかけなど市の業務が急に増えることを挙げ、「自治体からすると4を出すのに抵抗感があり、『3・5』があれば出しやすかったかもしれない」と推測している。

 警戒レベルをめぐっては今年5月、レベル4に相当する避難情報に、指示と勧告の両方があったのを整理し、勧告を廃止して指示に一本化するよう災害対策基本法が改正されたばかりだ。平成30年の西日本豪雨など近年多発する豪雨災害では勧告が避難につながらなかったことを踏まえ、効果的に避難開始のタイミングを伝えるために行われた。法改正を取りまとめた内閣府の担当者は「躊躇(ちゅうちょ)せず逃げてもらい、住民の命を守るためだったが、今後、関係者から当時の状況を聞き取り、運用を確認していきたい」と話した。

 避難行動に詳しい静岡大の牛山素行教授(災害情報学)は、「今回は避難指示を出すか判断に迷うような雨の降り方だった。(適切に判断するには)地元の気象台や河川管理者と十分連絡を取ることが大切になる」と指摘している。

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