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渋谷のごみを肥料へ再生 「諦めの感情」変えてあらゆる場所を出発点に

 【TOKYOまち・ひと物語】坪沼敬広さん 新しい文化が生まれる街、渋谷。流行の中心地として若者が行き交う場所だが、近年はハロウィーンイベントでの大騒ぎや落書きの増加など、「汚い」というイメージも持たれ始めている。そんな渋谷で出たごみを肥料へと再生させ、それを基に化粧品やスイーツなどの商品を作る取り組みが進んでいる。「渋谷肥料」代表の坪沼敬広(たかひろ)さん(34)は「渋谷を循環の出発点へシフトさせたい」と意気込み、消費の街・渋谷に新しい価値観を生み出そうとしている。

 きっかけは2年前、渋谷で行われたイベントに参加したことだった。「渋谷から世界に発信したいアイデア」を考えてグループごとに発表するという内容で、坪沼さんらは渋谷で顕在化するハロウィーン後のごみ問題に着目。調べてみると、渋谷区で出るごみの70%が事業ごみ、そのうち45%が生ごみで、「事業系生ごみ」の割合が非常に多いことに気が付いた。「これが全部肥料になればいいのに」。そんな考えから、渋谷のごみを肥料にし、育てた作物から新たな商品を生み出す「渋谷肥料」プロジェクトを立ち上げることになった。

 3商品開発進む

 肥料の基となるごみは、渋谷で出た生ごみや、カフェが廃棄するコーヒー粉の残りカスなどだ。これらを仕入れて機械を用いて発酵させ、オリジナルの肥料を作製している。これをそのまま販売するのはもちろん、肥料を基にしたオリジナル商品の開発も行っているのが、渋谷肥料プロジェクトの特徴だ。

 現在開発しているのは「サーキュラー(循環)」の名を冠した3種類の商品。生ごみを堆肥化し、種と土をセットにして袋に詰めた植物栽培キット「サーキュラーキット」、作製した肥料を用いて屋上菜園で栽培されたハーブのオイルから作るせっけんや化粧品などの「サーキュラーコスメ」、肥料を基に栽培されたサツマイモを用いたケーキやマカロンなどの「サーキュラースイーツ」だ。これらは渋谷の企業や専門家の力を借りつつ、「親しみのあるものを」との思いから開発を進めているという。

 「キット」は、屋上菜園用に渋谷の不動産オーナーがすでに活用しているといい、「コスメ」も、せっけんの手作り体験を行うなど顧客参加型のブランド作りを模索中。期間限定で販売した「スイーツ」も通年販売へ向け動き出すなど、「循環の出発点」としての渋谷は徐々に形成されつつある。

 全国へ波及を

 坪沼さんは「渋谷には『渋谷は汚い』とか『消費ばかりしている』とか、『諦めの感情』があると感じている。それを何とかしたい」と話す。そのために、各自の生活の中に浸透しやすい商品を開発し、販売する活動を続けている。「色々な人の力を借りて、理想の渋谷を追いかけているようなもの」と自らの活動を称し、今後も新たな肥料の活用法を模索していくという。

 理想は、この活動が全国に広がることだ。「『札幌肥料』とか『大阪肥料』とか、その土地にローカライズされたものがあってもいい。肥料の活用用途が他にも開発できれば、みんなが自分で作れるようになる」と、あらゆる場所が循環の出発点になることを夢見て、活動を続けている。(根本和哉)

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