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医療現場でも活躍する「生きた化石」 カブトガニに生存危機

 「生きている化石」といわれ、数が減少しているカブトガニの幼生を放流する催しが、愛媛県西条市東予地区の河原津海岸で行われ、市内の家族連れら約100人が参加した。2億年前からほとんど姿を変えることなく生きているカブトガニ。主に瀬戸内海から九州北部の沿岸に生息する節足動物で、クモやサソリに近いという。2億年前から生息するたくましい生命力だが、幼生が成育する干潟は欠かせない。瀬戸内海にはかつて漁業の邪魔者とされるほどたくさんいたが、海岸の埋め立てが進んだことを主な理由に激減しているという。

 繁殖地としては昭和3年に国の天然記念物指定を受けた岡山県笠岡市の生江浜が有名。西条市東予地区海岸も遠浅の干潟が残り、繁殖に適していることから、昭和24年に愛媛県の天然記念物に指定された。また、佐賀県伊万里市の伊万里湾も平成27年に国指定天然記念物となっている。

 西条市の東予郷土館は平成6年から毎年夏に河原津海岸で幼生の放流事業を継続している。今年は新型コロナウイルス対策として、人数を制限し事前に参加者を募集した。

 8月8日、家族連れら約100人が集まった。強い日差しの下、まずは全員で海岸の清掃から。続いて干潟の生き物調査を行い、子供たちは長靴やサンダルで干潟を歩き回り、ハマグリやアサリ、カニ、ヤドカリ、エビ、スナモグリといった生き物をバケツに入れていた。

 放流用に用意されたカブトガニの幼生は笠岡市のカブトガニ博物館から送られた約千匹。昨年11月に生まれて2回脱皮した3齢で、尻尾まで約2センチの大きさ。子供たちは紙コップに小分けされた幼生を手に、一列に並んで干潟に放していた。

 西条市内から参加した小学3年の杉恭太郎君は「これから大きくなって帰ってきてほしいです」と話し、弟の小学1年、周次郎君も「楽しかったです」と海遊びに満足した様子だった。母親の智子さん(41)は「子供たちが海の生き物が大好きなので参加しました」と喜んでいた。

 東予郷土館の光藤禎館長は「カブトガニを通じて自然環境保全の大切さを伝えたい。コロナがなかったらもっと子供たちを集め、いろいろと話をして伝えることができるのだが、縮小して実施した。それでも伝え続けることが重要だ」と話していた。

 カブトガニの血液は銅を含むため、青く見えるが、これを利用した病原菌の検査薬は医療現場でも使われているという。

 その生態も特徴的だ。カブトガニは18回脱皮するといわれる。オスは14回、メスは15、16回脱皮して成体になる。個体によって差はあるが12~13年かかるという。成体の大きさはオスで約50センチ、メスは約60センチ。自然の干潟では孵化(ふか)後、11齢くらいまで砂泥に半ば潜るようにして過ごし、ゴカイなどの生き物を食べている。その後、沖へ出ていくという。

 催しでは「四国カブトガニを守る会」の人たちやボランティアの地元高校生、中学生らが子供たちが安全に活動できるよう準備と現場での監視を担当した。

 東予郷土館ではカブトガニの成体を3匹飼育しており、透明な水を張ったプールでゆったりと動くカブトガニを観察することができる。

 学芸員の藤田宜伸さん(40)がプールの砂を探ると緑色の卵が見つかった。広島県や山口県下関市では、カブトガニが見つかるケースが増えてきているという。(村上栄一)

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