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もたらすものは成長?停滞? コスト増も株価は上昇、ESGの最新トレンド (1/2ページ)

 【経済24時】企業のESG(環境・社会・企業統治)が注目されている。気候変動対策や人権意識の高まりなどを背景に、今年の株主総会ではESGに関連する株主提案が続々となされた。これまで重視されてきた「数字」以外の価値といえるESG。企業活動にもたらすものは成長か、停滞か。

 収支マイナスでも投資

 「残業時間は適切か」「昇給や人事で、性差別や人種差別はないか」

 10年ほど前、食品メーカー、不二製油の中国法人に、取引先の欧米企業から状況を調査したいとの連絡が入った。

 当時、中国に駐在していた最高ESG経営責任者の門田隆司氏は驚いた。「それまでも調査はあったが、製品の品質に関することが中心だった」。グローバル企業が求める「スタンダード」に変化を感じた。

 その後、米のNGO(非政府組織)からは、パーム油の製造、販売で東南アジアの森林破壊や不当労働の助長につながっているのではとの指摘も寄せられた。

 業務用チョコレート製造で世界3位の同社。欧米の大手食品メーカーを中心に、取引先は世界に広がる。環境、人権など「社会」に配慮していないとみなされれば、取引が停止される可能性もあった。

 「いかにコストダウンするかとの視点が強かった」という経営から転換、環境対策、労務改善につながる事業を強化した。コストアップで一時的に収支がマイナスになっても、10~20年後に効果があると見込めば投資する。

 東南アジアでのパーム油生産過程も詳細に調査。あるサプライヤーには現地視察のうえ、200人以上の移民労働者にパスポートを返却させ、各人が理解できる言語で雇用契約を結ばせた。農園労働者から直接苦情を受け付ける仕組みも取り入れた。約1300の1次精製工場すべてで、原材料調達するサプライチェーンを把握。農園の労働者から直接苦情を受け付ける仕組みも取り入れた。いずれも日本企業としては先進的だ。

 昨年、英国のNGOから温暖化対策などで最高位の格付けを受けた。日本企業では同社と花王のみだ。門田氏は「顧客に新たな価値をもたらし、成長のドライバーになる」と断言する。

 ステークホルダー資本主義へ

 ESGへの意識の高まりの背景には、株主第一主義の見直しがある。見据えるのは、従業員、取引先、地域社会などすべての利害関係者(ステークホルダー)に目配りする「ステークホルダー資本主義」への転換。2019年に米国の経営者団体「ビジネス・ラウンドテーブル」も提唱したことで勢いがついている。

 一方で、必要性は分かるができない。そんな企業は多い。ESGと並ぶ概念である国連の持続可能な開発目標(SDGs)。帝国データバンクの調査では、50%強の企業が取り組んでいないとした。コスト面での懸念や、効果が見えにくいこともあるようだ。

 では、ESG対策はどんな価値をもたらすのか。

 関西学院大の阪智香教授は、ESGと企業の財務、株価の関係を調べた。ロンドン証券取引所のグループ企業が世界49カ国の企業に関し、ESGへの取り組みで格付けした評価と、各企業の株式時価総額の相関関係を検証。ESGと株価は99%の確率で有意性がある、つまりESGへの取り組みが高い企業は株価も高いとの結果が出た。

 日本総合研究所の長谷直子マネジャーは、ESG評価と財務の相関性を調査。評価の高い企業の経常利益増加率は、平均以下の企業に比べ2倍以上高かった。

 長谷氏はESGへの取り組みが成長を後押しする仮説として、事業活動での環境保護対策を進めているため、環境規制が強化されても対応できる▽働きやすさへの配慮で優秀な従業員の確保につながっている-をあげる。

 長谷氏は「米アップルが環境保護への取り組みで取引先を選別した際、対策をしていたことで取引を獲得した日本の中小企業もある」と指摘。「取り組まないリスクの方が大きくなった。そもそもステークホルダー重視は、日本の『三方よし』と同じ考えのはずだ」。

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