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パラ開催でハード面は進展 今後求められる「心のバリアフリー」

 共生社会の実現に向け政府はパラリンピック招致決定以来、交通網のバリアフリー化など環境整備を推進してきた。段差の解消といった数値目標(昨年度末まで)は軒並み近接した水準に到達したが、専門家からはハード面だけでなく、健常者からの声かけなど「心の面のバリアフリーが両輪として必要」との声があがる。(中村翔樹)

 対象、地方へ拡大

 政府は平成23年、バリアフリー法に基づき、交通網に関する令和2年度末までの達成目標を設定。国土交通省によると、鉄道駅、バスターミナル、航空旅客ターミナル(いずれも1日の平均利用者が3000人以上)で原則100%に設定された段差解消率は、元年度末までにそれぞれ92%、95%、87%に達した。

 車いすのまま乗れる福祉タクシーは、約4万4000台の目標台数に対し3万7000台あまりを導入。医療機関の周辺など多くの障害者、高齢者が徒歩利用する国指定の「特定道路」では、対象1700キロのうち91%で、歩道の拡幅や歩道橋へのエレベーター設置などを終えた。

 今年度からバリアフリー法改正に伴い新たな目標を設定。駅では1日の平均利用者が2000人以上を対象とするなど、小規模な施設に整備範囲を拡大した。担当者は「大都市圏では一定の水準に達しつつあり、地方などへ手を広げていく段階に入った」とする。

 目線に立った活用

 ただ、環境が整っても、障害者にとって使いやすいものかは課題が残る。

 障害者向け観光ガイドサイトの運営などを行うボランティア団体「赤十字語学奉仕団」は一昨年、JR新宿駅の状況を調査。同行した全盲の男性は、改札機の進入ランプが判別できず、通り抜けに相当の時間を要したと指摘。また、逆方向から来る乗客と衝突するなどの懸念も上がった。

 団員の若林淳子さん(47)は「改札機を入り口、出口で専用化すればスムーズになる。通り抜けのタイミングを待っているような方がいたら、自分は別の改札機を通るといった配慮もいい」と説明。「障害者の目線に立った仕組みと心配りがあれば、状況はもっと良くなる」と訴える。

 パラ機に相互理解

 「パラリンピアンのパフォーマンスとメッセージは、多様性を認め合える活力ある共生社会を実現する原動力になる」。今月17日の日本選手団の結団式で河合純一団長は、今大会の開催意義をそう強調した。

 世界各国でバリアフリーの現状を調査してきた筑波大の徳田克己教授(バリアフリー論)は「日本は物理的なバリアフリーでは世界トップにある」という。ただ、こうした充実したハード面が逆に「健常者の意識の低下」につながってしまっていると指摘する。

 徳田氏は、「どうしましたか」など、ちょっとした声がけをする「人によるバリアフリー」の重要性を説く。「結果的に、手助けは不要といわれることもあるだろうが、それも相互理解への道のり。今回のパラリンピックを、障害者との具体的なコンタクトの取り方について考えてみる契機にしてほしい」と話す。

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