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「誇れる街づくりを」 福岡・八女商議所の挑戦 (1/2ページ)

 【魅せる観光地の作り方】ホテルの玄関をくぐると、そこは非日常の空間だった。雪見障子(ゆきみしょうじ)や欄間(らんま)といった和の建具が懐かしさと新しさを感じさせる。

 築100年以上の古民家を改修し、人気を集めるホテルが福岡県八女市にある。「NIPPONIA HOTEL(ニッポニアホテル)八女福島 商家町」。茶葉の産地として有名な八女で、伝統家屋に滞在しながら、お茶をテーマとした食やイベントを楽しむ。価格は1人1泊2食付きで週末は大人3万8千~5万円程度。平日でも2万~3万円台と八女では異例の高価格だが、コロナ禍の今も予約が絶えない。

 客室は「喜多屋別邸」という1棟に3室、もう1棟の「旧大坪茶舗」に4室の計7室。この小規模・分散型の形態が、コロナ禍の下でも安全に旅を楽しみたい人たちの心理にプラスに働いた。

 令和2年4月と6月に2棟がオープンした。事業を主導したのは観光事業者でも行政でもなく、地元の八女商工会議所だ。

 存立の危機

 八女市は、福岡県南部に位置する人口約6万人の地方都市で、県内有数の農産物の産地でもある。八女茶の産地として知られるが、人口は減少の一途をたどり、消費の縮小で事業者の経営環境は厳しさを増す。

 「これまでのやり方ではだめだ。滞在型の宿泊施設をつくり、交流人口を増やそう」

 平成28年、同商議所の山口隆一会頭(71)は、こうした危機感から動き出した。

 同商議所では農産品振興に力を入れてきたが、経済効果は十分に出なかった。消費の減少を食い止めなければ、事業者は存立の基盤を失う。観光消費で経済を循環させようと、滞在型観光の可能性を探った。

 30年に兵庫県丹波篠山市の古民家再生事業を視察したのが転機となった。複数の古民家をホテルやレストランなどに改修し、街全体を観光資源にする取り組みで地域活性化に寄与している。

 「これなら八女でもやれる」。山口氏は確信した。八女の中心部にある福島地区は、江戸時代から昭和期に建てられた白壁の町家が残り、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。地区内の230棟の町家などに加え、提灯(ちょうちん)や仏壇といった伝統産業もある。地域資源を活用し、誘客につなげようと、丹波篠山市で事業を進めた「NOTE」(同市)を交えて、ホテル事業の検討がスタートした。

 悔しさを原動力に

 福島地区にはビジネスホテルと旅館が4軒しかなく、古民家ホテルも高価格な設定も前例のない事業だった。「八女でそんな高額の宿泊施設に泊まる人がいるはずない」。山口氏らの耳にはそんな陰口も入った。

 「必ず結果を出す」。関係者は奮起した。八女は地域資源はあっても長時間滞在してもらえず、悔しい思いをしてきた。観光客はうなぎと川下りで有名な近隣の柳川市に取られ、八女に来ても、宿泊は福岡市や久留米市に流れた。

 検討を進める中、古民家ホテルの改装に使える経済産業省の補助金の存在を知り、関係者は実現に向け動きを加速した。山口氏をはじめ商議所会員や地元事業者ら有志が出資し、観光事業を手掛ける企業「八女タウンマネジメント」を設立。行政に頼らず、地元経営者らが実行する仕組みを整え、少人数のコンセンサスで意思決定を迅速化した。

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