テクノロジー

ガス・電力、脱炭素技術確立急ぐ

 都市ガスや火力発電事業者などのエネルギー企業が脱炭素を目指し、次世代技術の開発に着手している。各社とも燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出する化石燃料を主力事業で扱っているが、温室効果ガス排出を実質ゼロにすることを目指している。脱炭素は世界の潮流にもなっており、次世代技術の開発は生き残りを懸けた取り組みでもある。

 東京ガスは水素とCO2から都市ガスの原料であるメタンを合成する「メタネーション」と呼ばれる技術の実証試験に着手する。横浜市鶴見区の同社施設内にメタネーション装置を設置し、来年3月からメタンを製造する。6月からは水を電気分解することで水素を製造する水電解装置も稼働させ、活用する。

 実証ではメタンの製造効率や製造プラントの耐久性などを確認する。実際に都市ガスとして利用するには製造コストの引き下げが不可欠なため、高効率化や大規模化などの技術開発に取り組む。

 都市ガスは海外から輸入された液化天然ガス(LNG)が原料。LNGの成分の約9割がメタンで、燃やせばCO2を排出する。メタネーションは工場などで排出されたCO2を回収して利用するため、実質的に排出をゼロと見なす。既存の都市ガス設備を使えることも大きなメリットだ。開発に取り組む水素・カーボンマネジメント技術戦略部の高畑和己グループマネジャーは「熱分野の脱炭素には不可欠な技術」と話す。

 東ガスでは2030(令和12)年に年間ガス販売量の1%を合成メタンに置き換える計画。都市ガス事業者では大阪ガスも開発を進めており、業界として50年までに90%を合成メタンとする目標もある。

 日本最大の火力発電会社、JERA(ジェラ、東京都中央区)は、アンモニアを石炭火力発電の燃料に混ぜて燃やす「混焼」の実用化を進めている。IHIが実証用バーナーの開発を担当。碧南火力発電所4号機(愛知県碧南市)で設備を整え、24年度にアンモニアを約20%混ぜて燃焼することを目指す。大型の商用発電所での大規模なアンモニア混焼は世界初という。

 石炭は化石燃料の中でもCO2排出量が多く、最新鋭の石炭火力発電所でもLNGの約2倍。アンモニアは水素と同様に燃焼時にCO2を排出しない。石炭に混ぜて利用すれば、既存の設備を生かしながらCO2削減が期待できる。40年以降にアンモニアだけで発電することも視野に置く。

 石炭火力の欠点を根本から解決しようとする技術開発も進められている。

 中国電力と電源開発(Jパワー)が折半出資した大崎クールジェン(広島県大崎上島町)は、石炭をガス化し、ガスタービンと蒸気タービンで発電する、より高効率な石炭ガス化複合発電(IGCC)の実証を進めている。19年12月からはガス化に伴い発生するCO2の分離・回収も行い、90%以上の回収に成功した。

 来年3月からは、CO2回収後に残った高濃度の水素を活用し、ガスタービンや燃料電池で発電する第3段階の実証を始める予定。回収したCO2の利用方法が課題だが、技術を確立できれば石炭を燃料にした水素発電も可能になる。

 Jパワーは大崎クールジェンで培った技術を既存の発電所に導入していく。第1弾として松島火力発電所(長崎県西海市)に石炭のガス化設備を導入、26年度からIGCCの運転開始を予定している。

 エネルギー企業はこれまでCO2を排出する化石燃料の活用を事業の柱に据えてきた。だが、昨年10月に政府が50年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)を打ち出し、何も手を打たないままでは主力事業の継続が困難になりかねない。一方、いち早く次世代技術を確立できれば、技術輸出などで国際的な主導権を握る可能性も広がるだけに、各社とも取り組みを加速している。

(高橋俊一)

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