金融

新生銀行、買収防衛策導入を決議 “白馬の騎士”探し難航も

 新生銀行は17日、SBIホールディングスからのTOB(株式公開買い付け)を受け、取締役会を開き買収防衛策の導入について決議した。SBIに対して詳細な質問を行っていることを明らかにし、TOBに関する意見表明は「留保」した。SBIの回答次第で臨時株主総会を開いて買収防衛策の発動を諮ることになり、敵対的TOBに発展する公算が大きくなった。

 買収防衛策では、既存の株主に新株を取得できる権利「新株予約権」を無償付与する。「非適格者」の条項を設けSBIは権利を行使できないようにした。SBIがTOBで新生銀の株式を確保しても他の株主が新株予約権を行使することで株式の総数が増え、SBIの保有比率が下がり影響力を弱めることができる。

 これと併せ、新生銀はSBIに対し10月25日までのTOB期限を12月8日まで延長することを要請した。

 新生銀はSBIへの質問状でTOB後の経営への関与などについて確認しており、回答内容を踏まえ買収防衛策が必要だと判断すれば、10月以降に開く臨時株主総会で株主の承認を受けて決定する。SBIがTOB期限の延長に応じない場合は防衛策を一部先行実施した上で事後的に株主総会で承認を得るとしている。

 SBIは既にTOBを開始し、新生銀株を1株2千円で買い取る。約1164億円を投じて出資比率を現状の約20%から48%まで高め、連結子会社化を目指す。成立後は新生銀の役員の全部または一部を変更し、「最適な役員体制」を実現すると説明している。

 企業価値向上の対案描けるか

 SBIホールディングスのTOB(株式公開買い付け)を受けている新生銀行が買収防衛策を実行に移すには、株主の賛同を集める必要がある。SBIの提案よりも魅力的な企業価値の向上策を対案で示せるかが鍵だ。ただ、業績の低迷が続いてきた状況下で賛同を得るのは容易ではなく、同時に進めているホワイトナイト(白馬の騎士)探しも難航が予想される。

 「破格ともいえる価格設定で、新生銀側の急所を突いた」-。大手銀行関係者はSBIが9日発表したTOB計画を見てうなった。

 TOBの買い付け価格は1株当たり2千円で、発表直前の株価(1440円)の約1・4倍に相当する。発表後に一時2千円を超えたが、それ以前は1300~1400円台で推移してきただけに、市場で高まったTOBへの期待感が新生銀に与えた衝撃は大きい。

 買収防衛策では既存株主に新株予約権を割り当ててSBIの保有率を薄める戦略だが、今後開く臨時株主総会での決議が不可欠だ。株主の理解を得るためには、株価がTOB買い付け価格の2千円を上回るような企業価値向上の対案を現経営陣が描く必要がある。

 だが、新生銀は主力事業の消費者金融が過去に取り過ぎた利息(過払い金)の返還請求などで低迷。令和3年3月期連結決算ではカードローンの利息収入の減少などが響き、本業のもうけを示す実質業務純益は前期比約2割減の722億円に落ち込んだ。株主の視線は厳しく、買収防衛策に賛同を得られるかは現時点では見通せない。

 一方、買収防衛策が成功すればTOBの効果が弱まるため、新生銀はSBIが様子を見るため10月25日のTOB期限を延長すると期待する。時間稼ぎの間に望まぬ提携圧力から救ってくれるホワイトナイトを探す考えで、セブン&アイ・ホールディングスやソニーグループといった名前も候補に浮上した。

 ただ、企業買収に詳しいIBコンサルティングの鈴木賢一郎氏は「SBIを上回る買い付け価格にする資金負担は大きく、候補者探しのハードルは高い」と指摘する。新生銀には公的資金など約3500億円の返済も残り、国が保有株の売却で回収するには1株当たり7500円程度とTOB発表直前の約5倍まで株価を上げる必要があるなど、経営再建はいばらの道だ。白馬の騎士が尻込みした場合、新生銀に抵抗の手段はほとんど残されていない。(高久清史)

 新生銀行 前身の旧日本長期信用銀行は、第二次世界大戦後の復興に向け基幹産業に設備投資資金を長期で貸し出す目的で設立。旧日本興業銀行(現みずほ銀行)や旧日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)とともに「長信銀3行」と呼ばれ高度経済成長を担う“名門銀行”だったが、バブル経済崩壊で多額の不良債権を抱え、平成10年に経営破綻し、一時国有化された。12年には米投資会社リップルウッドを中心とする投資組合に譲渡され、現在の名称に変更して再出発した。

 新生銀となってからは事業を個人向け融資と投資銀行業務に転換して経営を改善し、16年に再上場を果たす。だが、20年のリーマン・ショックで不動産融資が焦げ付いて経営が悪化。21年にはあおぞら銀と経営統合で合意したものの、経営戦略などをめぐって対立し22年に破談した。バブル崩壊で投入された公的資金の返済が大手行で唯一残る。

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