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なぜいまコンテンツに…変貌する「令和のおじさん像」 法律解説書、塗り絵も

 「おじさん」をテーマにした法律解説書や塗り絵などの関連書籍が相次いで刊行されている。昨年はおじさんが登場するドラマが人気を集め、「おじキュン」「おじカワ」なる言葉も話題となった。なぜいま、おじさんがコンテンツになるのか。令和のおじさん像を探究してみた。

 軽口は命取りに

 《おっさんたちよ、法律というサバイバルツールを手に入れよ》

 冒頭からそう呼びかけるのは、飛鳥新社からこのほど発売された『おっさんず六法』だ。著者でフリーライターの松沢直樹さんは、自営業者などの労働組合の執行副委員長として、おじさんたちの悩みに耳を傾けてきた。

 社会の変化に翻弄される自身と同じ団塊ジュニアや、就職氷河期世代など40~50代の男性らが、トラブルに巻き込まれるのを防ぎたいと筆をとった。

 「私が若いころはいい大学を出て、いい企業に就職すれば一生安泰と思われていたが、リストラも珍しくなくなった。運よく会社に居続けても、社内だけで通用するルールに身を委ねていると、転職や定年後の再就職の際に、変容する社会とのギャップに直面して痛い目に合う」(松沢さん)

 だからこそ、社会共通のルールである法律は身を守る武器となる。本書では、リストラに直面したときに頼れる労働基準法や労働契約法、転職の際に役立つ雇用保険法などの活用の仕方をわかりやすく解説している。

 中でも松沢さんが「同世代に活を入れるつもりで書いた」のは、ハラスメントに関する章。

 《以前なら、オヤジギャグとして白い目で見られるだけで済んでいた女子社員や若手部下への軽口が、命取りになりかねなくなった》とくぎをさす。

 また、食事やデートの対価として男性が女性に金銭を提供する「パパ活」の法的問題や、性的同意がなければ、妻であれ交際相手であれ、レイプ被害を訴えられることがあるなど、生活トラブルが刑事事件に発展するケースも盛り込む。

 「世の中の価値観の変化に疎いおじさんは多い。思い込みや古い価値観を見直すきっかけにしてほしい」と訴える。

 「オジ塗り」

 一方、大人向けの塗り絵を数多く出版している河出書房新社からは、おじさんだけの画材を集めた「オジ塗り」が3月下旬に登場した。ページをめくると、サラリーマンや侍、軍人、ギャング…。和風、洋風、若手から初老まで、幅広い設定が楽しめる。

 企画編集を担当した漫画家やデザイナーらによる制作集団「OJI WORKS」代表の鴨野丈さんは「アニメやゲーム、ボーイズラブ(BL)のジャンルでは、昔からおじさんは人気のキャラクター。塗り絵は数年前からアイデアを温めてきたが、昨年の“おじさんブーム”に乗り、一般の人にも受け入れられると思った」と明かす。

 鴨野さんのいう“おじさんブーム”の牽引(けんいん)の一つが、昨夏放送されたTBS系ドラマ「私の家政夫ナギサさん」だ。

 家事と恋には不器用な働き盛りの28歳独身女性のもとに、家政夫のおじさんが現れて巻き起こるラブコメディー。エプロン姿のナギサさんを演じた大森南朋さんが人気を博した。

 同時期に読売テレビ・日本テレビ系で放送された「おじさんはカワイイものがお好き。」では、容姿端麗で仕事もできるのに、カワイイものが大好きという秘密を抱えたおじさんを眞島秀和さんが好演した。ネット上では、「おじキュン」「おじカワ」などの言葉が並んだ。

 いずれもウェブコミックが原作で、おじさんの包容力や穏やかさ、かわいさに魅力を見出した点が目新しい。塗り絵の多様な設定といい、「令和のおじさん」に対する世間の見方は“企業戦士”“頑固オヤジ”一色だった前時代より幅広くなったといえそうだ。

 もったいない

 身を置く環境も、周囲からの視線も、昭和、平成とはずいぶん変わった令和のおじさんたち。

 ただ、そうした外側の変化に「当のおじさんたちが気づいていないのは、もったいない」と、大正大の田中俊之准教授(男性学)は指摘し、こう続ける。

 「就職氷河期世代は特に、雇ってもらっているだけで幸せという価値観でサラリーマン生活を送ってきた人が多い。上の世代も含めて、競争に勝ち抜き、仕事中心で定年まで勤めあげるというビジョンしかないおじさんたちにとって、労働に関する権利や世の中の変化に気づかせてくれる法律書は役に立つ」

 また世の中から推奨されている「ワーク・ライフ・バランス」や「育児参加」に一歩足を踏み入れることで、「会社員生活しか知らない視野の狭さに気が付くことができる」とも。

 「おじさんをテーマとする漫画やドラマがヒットしているように、周囲はおじさんの中にある多様な魅力を感じている。同質集団内の競争ばかりの生活から抜け出し、世界を広げることで、人生を豊かにすることができますよ」(篠原那美)

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